13日、岐阜県内で唯一の百貨店「高島屋岐阜店」が来年7月末で閉店することが発表されました。主な理由は、業績の回復が見込めないこと。この店にかかわらず、地方のデパートが店じまいするニュースを最近よく見ます。愛知県でも、2021年に松坂屋豊田店が閉店したことで、三河地方には百貨店がありません。
百貨店業界は経営が厳しいと言われています。日本百貨店協会によれば、1998年の百貨店全体の売り上げは9兆円を超えましたが、2022年は約5兆円に減っています。他の小売業種との競争の激化や、少子高齢化などの社会変化、新型コロナウイルスによる影響……。経営不振には、さまざまな原因があります。
そんな中で、14日付の朝日新聞の「百貨店3社 増収増益」という記事を読んで驚きました。「都市部では訪日客需要の増加に加え、国内富裕層による高額消費が押し上げた」そうで、高島屋は営業利益が過去最高を記録したとのことです。全体的に利益が落ち込んでいるのだと勘違いしていましたが、たしかに地方百貨店の運営は厳しいものの、大都会にある大手はコロナ禍による落ち込みを回復し、利益を伸ばしているようです。
大手百貨店勤務経験のある、フリージャーナリストの川嶋幸太郎さんの著作『百貨店地図が塗り変わる日』には、こんな指摘もあります。
今後も百貨店は生き残っていけないだろう、という論調が多くのマスコミの主流だ。
とんでもない間違いである。
これだけの数の百貨店の売り場が減っているということは、売り上げが減少するのも当たり前で、むしろ今後を考えれば、百貨店のオーバーストア状態は改善され、生き残った百貨店にとっては大チャンスなのだ。
私は手土産を買うときぐらいしか行かないので、今まであまり興味がありませんでした。でもこれからは、コンビニやスーパーなど、さまざまな形態の小売業が進化して、社会の消費のかたちも変わってきているなかで、百貨店の変貌にも注目したいものです。また、日本の近代消費文化を形づくってきた舞台なので、経済効果やデザイン、ジェンダーという観点で調べてみるのもおもしろそうです。
参考記事:
14日付 朝日新聞朝刊(13版)9面「百貨店3社 増収増益」
参考資料:
読売新聞オンライン「岐阜高島屋閉店に衝撃 来年7月末」
中日新聞オンライン「〈2021三河回顧〉(下)松坂屋豊田店閉店」
日本百貨店協会ホームページ「百貨店売上高」
川嶋幸太郎『百貨店地図が塗り変わる日』
谷内正往・加藤諭『日本の百貨店史』