「ステマ天国」返上なるか 10月1日から規制開始 

「これステマじゃない?」

友人と一緒にテレビを見ていると、突然その友人が言い出しました。見ていた番組は、芸能人がそのファンの一般家庭に訪れるという特に珍しくもない内容だったのですが、よく映る位置に空気清浄機が置かれていてカメラワークも不自然だと言うのです。空気清浄機のステルスマーケティング(ステマ)、つまり広告であることを隠し、商品の評判を上げるための宣伝をしているのではないかと疑っていました。

その時は、特に違和感を覚えなかったのですが、その空気清浄機は取材に協力してくれたお礼として、その家庭にプレゼントされていたことが番組の最後に明かされました。つまり、スポンサーの宣伝の一環として映されていたということになります。商品紹介や広告の形態ではなくても、視界に入る機会が増えるだけで、宣伝効果はあります。今回は最後にスポンサーの存在が明示されたのでステマには当たりませんが、このような手法の宣伝に気づけない私は、普段SNSなどでどれだけの影響を受けているのかと恐ろしくなった瞬間でした。

 

以前から問題になっていたステマですが、日本は主要国の中では唯一規制されておらず、「ステマ天国」とも呼ばれていました。しかし、今月10月1日からステマは景品表示法で定める不当表示に指定され、取り締まりの対象になりました。SNSがその影響力を強めている中で、この規制には大きな意味があると思います。昨年2月には動画共有アプリTikTokの運営企業が、インフルエンサーのツイッターを利用してステマをしていたことが発覚し問題になりましたが、このような事例は今後減っていくことでしょう。

ただ、ステマの議論で度々問題になってきたのがその線引きの難しさです。

「客に口コミを依頼し、SNSに投稿してもらうのはステマに当たるのか」。

「パートナー企業の商品を『おすすめ』と投稿した場合はどうか」(読売新聞オンラインより)

前者は「口コミで低評価される可能性もある」、後者は「直接的な関与があるかどうか曖昧」という点でそれぞれステマの定義から外れた部分があり、実際に規制対象になるかどうかは怪しい所だと思います。このようなグレーゾーンの事例についても、一律に広告だと明示させることを一消費者としては望みますが、強制力のある取り締まりにも限界があります。

法律の効力にも期待しつつも、今まで通り世の中にはステマがあることを前提に、個々に情報を見極める力、つまりリテラシーを高めていく必要がありそうです。

 

参考紙面:

・10月5日付 日経電子版『ステマ規制 浸透探る 線引き複雑、残る曖昧さ – 日本経済新聞 (nikkei.com)

・10月1日付 読売新聞オンライン『「ステマ」きょうから禁止…インフルエンサーの「自主的な投稿」対象外、線引き難しく : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

・2022年2月10日付 読売新聞オンライン『TikTok、ステマ報酬7600万円…運営会社がインフルエンサー20人に支払い : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)