「改善」と「確かな安心」、待ち望む

「もうすぐ車が届くよ!」。母は嬉しそうに話しました。この春、我が家には新車が届く予定でした。筆者も「早く新しい車を運転したいな」と、胸を躍らせていました。その新車のメーカーは三菱自動車。「せっかく新車が来ると思っていたのに、残念」。昨晩、愛知に住む母からメールが届きました。私もがっかりしました。同じように残念な思いをした方は、大勢いるのではないかと思います。

三菱自動車は20日、軽自動車4車種で燃費を実際より良く見せる不正を意図的に行っていたと発表しました。合計62万5千台が対象で、車を納入している日産の指摘で発覚。三菱の相川哲郎社長は同日、国土交通省で記者会見し、「お客さまと関係者に深くお詫びする」と陳謝しました。不正があったのは自社の「eKワゴン」「eKスペース」と、日産に供給している「デイズ」「デイズルークス」の計4車種です。軽自動車分野で提携する日産が対象車の燃費を調べたところ、事前の数字と検査結果に開きが見られました。製造元の三菱に確認を求め、同社が内部調査をしたことで不正が明るみに出ました。実際の燃費は届け出の数値よりも5~10%悪くなる可能性があるといいます。

三菱では2000年にも「リコール隠し」問題がありました。経営危機に陥り、04年からは三菱重工業、三菱商事などの支援を得て、存続できました。指摘したいのは、今回の不正の端緒をつかんだのが、共同開発先の日産だったという点です。三菱自動車が失った信頼は大きく、「企業体質が変わっていない」「過去から何も学んでいない」と思う人は大勢いると思います。また、「三菱」というブランドに深い傷を負わせることになりました。

 “大切なお客様と社会のために、走る歓びと確かな安心を、こだわりを持って、提供し続けます。“

これは、同社の企業理念です。「大切なお客様と社会」「走る歓びと確かな安心」「こだわり」。三菱にとって、お客様と社会を本当に大切にして思っているのでしょうか。走る歓びと確かな安全は、保障されているのでしょうか。こだわりとは何でしょうか。いま、求められているのは、企業体質を変える努力と過去の失敗から学ぶ姿勢です。

私は幼い頃から三菱のクルマに乗って育ちました。三菱の軽も、ミニバンも大好きで、思い出もたくさんあります。新たに届く予定だったクルマも、楽しみにしていました。「走る歓びと確かな安心」。会社の姿勢を根本からあらため、クルマを通して私たちに提供してくれる日が来ることを、心から待っています。

参考記事:

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