言語とジェンダー

私は現在、スペインに留学しています。これまで留学に向けて準備を進めたり、スペイン語を学んだりした中で、言語とジェンダーの関係に興味を持つようになりました。交換留学先の大学、現地の保険会社やシェアフラットのオーナーとメールでやり取りする中で 悩まされたのは、敬称でした。相手の名前を見ても性別が分からず、インターネットで調べます。しかし、その人の性自認まで知ることはできません。反対に、私は女性であるのに、男性に対するメールの書き出しが使われていたこともありました。

今まで日本語でメールをする際には、相手の性別を一切気にしなかったことに、はっと気づきました。「さん」や「様」といったニュートラルな敬称を使っていたからです。昨今では、職業を指す言葉にも変化しており、ジェンダーニュートラルな表現が増えているように感じます。看護婦、保母のように女性に限定した言葉ではなく、看護師、保育士のように性別に関わらず用いることのできる言葉が主流になっています。

しかし、女性研究者やリケジョのように、あえて女性に限定するような形で書かれることもあります。それは、その分野や業界において女性がまだ希少な存在であるということを示しているのでしょう。

日本語と比べて、スペイン語は性別への意識が強くならざるを得ません。多くの名詞、形容詞が男性形、女性形に分かれているからです。ところが近年、言葉を男女で分けることを避ける「インクルーシブ・ランゲージ」が一部で使われているようです。男性、女性の区別を必要としないという主張はよく理解できます。しかし、「インクルーシブ・ランゲージ」の使用は一部に限られており、私自身も今のところ耳にしたことはありません。今後、どのような動きを見せるのか、注目してみたいと思います。

参考記事:

6日付 アミーゴはアミーゲ? スペイン語の「男性」「女性」に生じた変化:朝日新聞デジタル (asahi.com)


追記

日常の会話で「インクルーシブ・ランゲージ」を耳にしたことはいまだにないのですが、スペイン語の授業でパートナーに関する話をしていた際に、先生が “chico/chica(少年・少女)” を性別を分けない “chixue” と言っていたのを聞きました。また、授業内の呼び掛けでは、”chicos, chicas” と両方の性を使っていました。(通常、男女両方がいるときは、男性形の “chicos” になります。)