「北海道の夏」と聞いてどのようなイメージを浮かべますか。
涼しくて過ごしやすく、猛暑とは無縁。そんなイメージはもはや過去のものとなりつつあります。
○連日の猛暑
今夏の北海道は、異常な暑さに見舞われています。
今月23日には、札幌で36.3度を記録しました。これは、統計を取り始めた1876年以来、最も高い記録です。同日の道内各地の最高気温を見ると、北見(37.1度)や旭川(35.0度)など、27地点で35度以上の猛暑日となっており、全道が猛烈な暑さに見舞われたことが分かります。
札幌の過去の真夏日の日数を見ると、10年(20日)や12年(同)など、20日以上の真夏日となった年もありますが、日数が一桁という年が多くありました。それどころか、01年や03年など、真夏日がない年もありました。
このように、かつては30度以上の真夏日はまれだった北海道ですが、今年は、当たり前。35度以上の猛暑日も珍しくありません。札幌市中央区では、8月の真夏日は27日までに21日を記録しています。
○暑さに慣れぬ道民
暑さに慣れない道民にとって、今年の猛暑は数字以上にこたえるものがあります。
エアコンのない家庭は珍しくありません。少し古いデータになりますが、総務省の14年の全国消費実態調査によると、北海道の2人以上の世帯におけるルームエアコン普及率はわずか26.6%にすぎません。幸い筆者の住まいはエアコン付きですが、そうでない物件に住む友人も多く、連日の猛暑に苦しんでいるようです。
熱中症による被害も深刻です。総務省消防庁によると、道内で今月21日から27日にかけて熱中症で搬送された人は935人(速報値)で、これは昨年の同時期の約26倍です。この時期は、札幌で連日35度近い気温を記録しています。慣れない暑さが、道民の体に大きな打撃を与えているものと考えられます。
○対応を迫られる教育現場
記録的な暑さは、児童の命をも危険にさらしています。
今月22日には、北海道伊達市の小学校で2年生の女子が体育の授業後に、熱中症とみられる症状で死亡する事故が起きました。当時、学校側は熱中症の危険度を示す「暑さ指数」を確認していなかったといいます。学校は子どもたちの命を預かる立場にあり、授業環境の適切な把握が求められます。
公立学校でのエアコン設置率の低さも問題です。文部科学省によると、北海道の公立小中学校の普通教室の冷房設備(スポットクーラーを含む)設置率はわずか16.5%(22年9月1日時点)です。全国の設置率が95.7%(同)であることを考えると、きわめて低い水準であることが分かります。
道内でも今後、エアコンの設置が急がれますが、コストや設置業者の不足などを考えると、一斉に導入することは困難であると考えられます。どのような優先順位にするか、設置されるまでの過渡期の暑熱対策をどうするか、難題が教育現場に突きつけられています。
ここ数日、札幌の気候はようやく落ち着きを見せ、秋らしさも感じられるようになりました。しかし、今後も30度以上が予想される日があり、もう少し暑さと付き合っていく必要がありそうです。
参考記事:
8月24日付 朝日新聞朝刊23面「熱中症の危険指数、確認せず外で体育 伊達の小学校、女児死亡/北海道」
8月28日付 北海道新聞朝刊15面「真夏日21日目 8月最多更新*札幌市中央区」
参考資料:
総務省消防庁「熱中症による救急搬送人員(8月21日~8月27日速報値)」
文部科学省「公立学校施設の空調(冷房)設備設置状況について(令和4年9月1日現在)」
e-Stat「平成26年全国消費実態調査/都道府県別 北海道/表47/地域編 主要耐久消費財に関する結果-二人以上の世帯/地域別1000世帯当たりの主要耐久消費財の所有数量及び普及率」