みなさんは、「体を張るフルーツ研究家」をご存知でしょうか。「甘いから食べない方が良い」という根拠のない噂を払拭するために、元東大教員の中野瑞樹さんは立ち上がりました。中野さんは、2009年から実験的にフルーツ中心の食生活を続けています。
今回は、中野さんにフルーツの魅力を存分に語っていただきます。
――筆者も小学2年生から毎日食べ続けていて、ほとんど病気にかかることなく健康に過ごしてきました。フルーツを食べると、病気にかかりにくいということはあるのでしょうか。
「私もフルーツ生活を始める前は、毎年風邪をひいていましたが、実験以降は、ほとんどひいていませんね。フルーツは、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、現代日本人が不足しがちな栄養を補ってくれます。例えば、赤肉メロンや温州みかんなどに多いビタミンAは、のどを含めた粘膜を強化するので、風邪予防が期待できます。」
――今年の異常な暑さを乗り切るために、おすすめのフルーツはありますか。
「まずはスイカです。水分量が多いのはもちろんのこと、赤肉と外果皮の間の白い部分には、血管を拡げたり、疲労物質のアンモニアを代謝するシトルリンが豊富なので、特におすすめです。また、暑い日、口の中をサッパリさせたいなら、やや苦みがあるハッサクやグレープフルーツジュースが、屋外で火照った体を冷やし、汗をひかせたいなら、凍らせてシャーベットにしたりんごジュースがおすすめです」
――最近、本を出版されたということですが。
「『中野瑞樹のフルーツおいしい手帳』です。値段は1815円(税込み)と少し高めですが、普通の本の数冊分以上の情報量がありコスパは抜群です。第1部は総論で、第2部は主要20フルーツに焦点を当てて、品種の分類や部位名称、目利きポイントや保存方法などを、オールカラーで写真やイラストや図表付きで解説しています。128頁と薄めですが、フルーツの総合辞典なので、フルーツ好きの消費者の方はもちろん、医療従事者や果樹農家さんや果物屋さんなどのフルーツ業界のプロの方々にも、是非手元に置いていただきたい本です。」
中野さんは、摂取する飲食物全ての重さを計り、その栄養価も把握しながら日々の生活をしています。栄養学の知識のない方が真似をすることは、深刻な栄養不足が起きる可能性があり危険だそうです。
生活習慣病予防のために、厚生労働省が推奨しているのは、「1日200gのフルーツを食べること」。恐らく、ほとんどの方が達成できていないと思います。是非とも中野さんの本を読んで、その魅力に気づいてみてはいかがでしょうか。以下に、フルーツ200gの目安と、日本人が不足しがちな主な必須栄養素とその栄養素が特に多く含まれている、日本で一般的なフルーツを紹介しておきます。
フルーツ200g(可食部)の目安
・温州みかん:Sサイズ4個、Mサイズ3個
・りんご:2/3個
・バナナ:2本
・キウイ:2個強
・いちご:1パック弱
・もも:1個
・柿:1個強
・ビタミンA(赤肉メロン、あんず、温州みかん、せとかなど)
・ビタミンC(キウイ、柿、いちご、オレンジなど)
・カリウム(バナナ、メロン、キウイなど)
・マグネシウム(ドラゴンフルーツ、バナナ、パパイヤなど)
・カルシウム(キンカンなど)
・食物繊維(レモン、ブルーベリー、柿、キウイなど)
下記の写真は、冬場に大量のみかんを食べて変色した中野さんの手
参考記事
8月21日付 読売新聞夕刊 「[中野瑞樹さんのくらし本]果物主食14年 目利きの知恵」
中野瑞樹,2023「中野瑞樹のフルーツおいしい手帳」河出書房新社