学校の選挙でも得票数の開示を

 

学級訓、学級旗をどれにするか。クラスTシャツのデザインは何にするか。クラスの代表を誰にするか。ふさわしい委員長は誰か。生徒会会長を誰に託すか。学校生活で避けられない「投票」。一体全国でどれくらいの学校が、この活動を意義あるものにできているでしょうか。

教育実習の現場で見た生徒会役員の選挙では、得票数が開示されていませんでした。教員の友人に話を聞いても、よくあることのようです。理由は「教育的配慮が必要だから」。得票数があまりにも少ない生徒に、その現実を突きつけることは必ずしもその子のためにならない——しかしこれには、強い違和感を覚えます。

実際の国や地方の選挙で得票数が開示されるのは、誰が、どの政策がどれだけ支持されたのかを明らかにするためです。中学校の公民でも習ったように、勝った多数派のみの意見が通るのではなく、少数意見を尊重してこそ民主主義は達成できます。民意を反映した得票数を見て、為政者は今後進む道を決めるでしょう。子どもたちの投票も、同じであるべきです。民主主義の大切さ、誰一人取り残さないことの意義を実感し学ぶためにも。

確かに現状では、あまりの得票数の少なさにショックを受けて、塞ぎ込んでしまう、学校に来られなくなってしまう、ということもあり得なくはないでしょう。しかしそこで、「だからやめる」という選択肢をとってはいけないと思います。

どんな人がリーダーであるべきか、学校をよくするためにどんな政策を取るべきか、あらかじめじっくり話し合う機会を設ける。事前に民主主義の練習であるということ、民主的な学校生活を実現するための手段なのだということを、教員、児童・生徒ともに深く理解しておく。選挙で落選したからといって、人格が否定されるわけではない。あくまで今、その役職を務めるには力が足りないと判断されただけだ、という前提を事前に共有しておく。できる工夫はいくらでもあります。

生徒会活動においては,例えば次のとおり資質・能力を育成することが考えられる。(中略)
○生徒会において,学校全体の生活をよりよくするための課題を見いだし,その解決のために話し合い,合意形成を図ったり,意思決定したり,人間関係をよりよく形成したりすることができるようにする。
○自治的な集団における活動を通して身に付けたことを生かして,多様な他者と協働し,学校や地域社会における生活をよりよくしようとする態度を養う。

これは、文科省のまとめた中学校学習指導要領の解説です。自治的な集団で合意形成する練習は、さまざまな人が集まる学校だからこそできること。そこでできる体験、養える力を最大限引き出せるようになることを願います。