深刻化する過疎地域の問題。取り組むべきこととは。

先月、フィールドワークで長野県栄村を訪れました。大学の授業の一環です。東京駅から上越新幹線を使い約90分で越後湯沢駅に到着し、その後車を使って約60分で到着します。長野県の北部に位置する栄村は、人口約1700人の小さな自治体です。北野天満温泉をはじめとする多くの温泉、トマトや山菜、お米など豊富な特産物と色々な魅力があります。日本最高積雪地点を記録したほどの豪雪地帯であり、スキー場には多くの観光客が訪れるそうです。

      長野県の栄村にある森宮野原駅(筆者撮影)

そんな自然豊かで過ごしやすい栄村での調査を終え、この地域が色々な場面で都市部の生活と関係を持っていることを知りました。一方で、地域の問題も浮かび上がってきました。中でも、人口減少と高齢化は私たちも考えなければなりません。

問題が加速すると二つの深刻な事態が生じます。1つ目が空き家や商店街の閉鎖といった住環境への影響。2つ目が耕作放棄地の増加などの経済的な問題です。栄村も住民の半数以上が高齢者となっており、働き手がいなくなったために放棄されてしまった水田や空き家を多く目にしました。水田の耕作放棄への対処は最重要の課題だと筆者は思います。私たちの食糧に関わるだけでなく、水田が土砂崩れや洪水を防ぐといった多面的機能を持っているためです。朝日新聞では特集記事「田んぼダムの挑戦」が昨日から組まれており、第1弾として田の防災機能が農家の声とともに紹介されていました。

では、どう対処していけばよいのでしょうか。答えは一つしかありません。若い世代が村落へ足を向け、最終的には定住することです。ですが、暮らしていた環境をがらっと変えて移り住むことは難しい。そのため、最近は地域を活性化するために、有償でその土地に行く「地域おこし協力隊」の活動があります。この協力隊に昨年は6813人が参加し、近年は増加傾向にあります。20代から50代が8割を占め、女性の参加者が4割を超ええているといいます。加えて、参加者の65%ほどは最終的に定住しています。

今日の日経新聞には、地方自治体が人口の増加のために「リゾート」「子育て支援」「企業誘致」に力を入れていることが紹介されていました。例えば、鳥取県日吉津村では子育て世代に住宅購入費用の補助を制度化しました。また、熊本県菊陽町では台湾の大手半導体受託生産メーカーの工場を誘致しています。来週からは多くの大学生が夏季休業を迎えると思います。この長い夏休みの期間ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

 

参考記事

25日付 朝日新聞朝刊 (13版)29面(社会・総合)てんでんこ 田んぼダムの挑戦1

26日付 日経新聞朝刊 (13版)3面(総合2)地方人口増、3つの吸引力

参考文献

賢者のさと 栄村・秋山郷

長野県栄村HP

令和4年度 地域おこし協力隊の隊員数等について(総務省)

過疎地域等における今後の集落対策のあり方に関する中間とりまとめ(総務省)