12日付の日本経済新聞の朝刊では、大学が授業の一環として、有給で長期間の就業を体験させる「コーオプ教育」の取り組みが紹介されていました。企業主導のインターンシップと似ているように見えますが、「企業がプログラムを策定、原則無給、短期間」というインターンシップと異なり、コーオプ教育は「大学と企業が共同でカリキュラムを策定し、原則有給で長期間」という特徴があります。
数日や数週間の短期間のインターンシップでは、自分の持つスキルの向上や新たな取得は望めませんが、コーオプ教育なら学生の専門や興味にあったカリキュラムを数カ月に渡り、学ぶことができます。このため、技能や知識がしっかりと身に着くことが期待できます。
筆者は大学2年の4月から、Googleなどの検索エンジンから自サイトへの流入を増やすSEOマーケティングを企業の長期インターンで行っていますが、「始めてよかった」という気持ちと「もっと早くにやっておけば」という後悔の両方を実感しています。
「長期インターンを初めてよかった」と思う最大の理由は、社会で活かせる専門スキルの習得ができたことにあります。
始めたばかりの頃は、SEOが何を表すのか、検索エンジンの表示ページで上位をとる方法など、なにもわからない状態でした。しかし、1年従事したことで、専門知識が以前よりも増え、今では「あるキーワードを調べるニーズやペルソナをどのように仮定し、どういった記事を書けば検索結果の上位をとることができるのか」を考えたうえ、それがうまくいかなかった場合の改善なども含め、一連の流れを一人でこなせるようになりました。
「書くことの専門スキルを学びたい」という自身の目的に対して、専門的にアドバイスをくれる上長の元で学べ、お金をもらいながら実際に運用してみる貴重な機会を得たことは非常に有難かったと痛感しています。
だからこそ「1年生の頃からやっておけば」と感じる部分もあります。当時の筆者は飲食店で接客のアルバイトをしていました。販売員として様々なお客様と話す能力を身に付けましたが、長期インターンのように専門的なスキルを得る機会はありませんでした。決められた手順に沿った業務が多かったため、自分で考える機会が少なかったからでしょう。
もちろん全てのアルバイトが筆者のように感じるわけではありません。しかし、通常のアルバイトでは自らが進んで積極的にアクションをおこし、何かの成果を得たり、生み出したりすることは少し困難なようにも感じます。
筆者は就職活動を始めたばかりですが、「実践的で他者とは少し異なる優れたスキル」を持つことは、就活でも優位に動いていると思います。3年生から長期インターンを始めることもできますが、早期化の進む就職活動では成果がでるまでは待ってくれません。
だからこそ、学校と企業が共同で学生の専門や興味に合うカリキュラムを策定し、それを実践できる「コーオプ教育」は非常に魅力的なカリキュラムです。1年生から関心のあるスキルを、授業の一貫として企業で学ぶことができますから。「授業と長期インターンと就活と部活の両立なんてムリだ」「就活でアルバイトしている時間がない」と感じている就活生も、実践的な学びを授業として学び、かつ給料をもらえるのなら、就活などに使える時間は増えるのではないでしょうか。またやりたいことと企業とのミスマッチに就職活動を始めてから気づく悲劇を減らすことも期待できます。
企業側にも大きなメリットがあるでしょう。コーオプ教育の導入は、会社が求める技術をもった学生を早期から育成することや、企業の理念や社風にあった人材を早く見つけることにも繋がります。
実際に始めると企業と大学の思惑のずれなどの問題も出てくるでしょうが、「学生時代に専門的な技術を培える経験」は、社会に出た際に大きなアドバンテージになります。大学側は、そのことを考慮して是非前向きに検討してほしいものです。
参考記事:
7月12日付 日本経済新聞朝刊・28面「有給・長期就業の授業 金沢工業大、約20社と即戦力を育てる 茨城大、学部横断の必修課目に」