皆さんは自首の制度についてどう考えますか。自身の過ちを認め、告白するには勇気がいりますよね。筆者が小学生の頃の話です。友達とケンカをし、非があるにも関わらず一歩も譲らない筆者を見て、担任の先生は「今正直に言えば許すよ」と言いました。その言葉を聞くと急に胸のつかえがおり、すべてを素直に告白しました。刑事事件の世界でも自首をすれば、刑が軽くなることがあります。このやり方、賭博問題で揺れる野球界でも通用するのでしょうか。果たして効果はあるのでしょうか。
日本野球機構(NPB)は4日、プロ野球の賭博問題に関与したことを選手や関係者が自ら申告した場合、失格処分を最短1年間とする特別措置をとることを決めました。適用は6日から25日まで。真実を告白しやすい環境をつくり、賭博問題の全容解明につなげることが狙いです。
昨年、相次いで元巨人選手の賭博が発覚し、3人が無期失格処分を受けました。その後一軍でも登板経験のある高木京介元投手の関与が新たに分かり、1年間の失格処分となりました。この処罰の差は、賭博の回数や調査への協力度が考慮されたものです。
野球好きの筆者にとって、賭博の事実を知った時の失望落胆は非常に大きいものでした。ファンを裏切り、球界の信用を地に落とした責任は重い。そして何より子供たちの夢と希望を奪った罪は深いです。さらに賭博問題が八百長行為や暴力団との接触につながることも考えられます。
プロ野球の憲法とも呼ばれる野球協約180条1項では、賭博などの違反者に対し、「1年間または無期の失格処分とする」と定められています。今回の特別措置では、本来なら無期失格処分になる場合も、野球賭博常習者との関係を断ち切ったうえ反省が認められれば、処分期間は1年となります。もちろん、他の選手を賭博行為に誘うなどの悪質なケースや、八百長による永久失格には適用されません。
NPBにとっても苦渋の決断であったといえます。背景には捜査権のない任意聞き取りの限界があり、今のままでは全容解明は難しいという現実があります。特別措置は、弁護士や元プロ野球選手ら有識者5人の意見を聞きながら、慎重に検討されました。とはいえ、これで選手たちが正直に告白するかはわかりません。自首をすれば1年間の失格処分だけではなく、選手や球団のイメージにも傷がつくでしょう。精神的にも大きな負担を伴うことです。
また、自主申告で処分軽減というやり方に、どこか野球界独特の甘い姿勢というものを感じてしまいます。大相撲八百長問題では一場所が休場になりました。Jリーグのサポーターによる差別的な横断幕の問題では無観客試合処分が下されています。球界全体が危機感を共有すれば、もっと重い責任の取り方もあるのではないかと思います。この程度の処分でファンが納得するのか、という懸念もぬぐいきれません。
厳しい現状を打開するきっかけをつかむために、行動を起こしたことは意義のあることだと思います。これが賭博常習者との間の深い闇を洗い出し、すべての膿を出し切ることで再出発できるかどうか。私たちができることは、厳しい監視の目を持ち続けること、そしてこれからもチームに寄り添って応援を続けていくことでしょう。
5日付 朝日新聞朝刊 14版 21面 「賭博自主申告制を決定 NPB処分1年に軽減」
同日付 読売新聞朝刊 13版 34面 「野球賭博無期失格 自主申告で処分1年も NPB25日までの時限措置」
同日付 日本経済新聞朝刊 12版 33面 「野球賭博関与自主申告促す NPBが特別措置」