今月3日に陸上の日本選手権が開催され、群雄割拠の女子100m障害では寺田明日香(ジャパンクリエイト)選手が優勝しました。ここで出てくる「障害」とは、ハードル走のことを指します。
では、みなさんは障害者スポーツである「デフサッカー」「デフフットサル」を耳にしたことがあるでしょうか。たとえ聞いたことがあっても、このスポーツを体験した人は少ないと思います。今回は、障害者スポーツを掘り下げていきましょう。この分野に精通し、筆者と同じ21歳でありながら車いす用スロープを制作するなど埼玉県などの関東近辺で様々な活動に個人で取り組んでいる清水優太さんからお話を伺います。
そもそもデフサッカーとは何ぞや。聴覚に障害をもつ人によるサッカー競技で選手は補聴器を外してプレーをするため、「音のないサッカー」ともいわれます。主審は笛のほかにフラッグも使用します。「ろう者サッカー」という呼び名もあります。
デフサッカーは審判が旗を使って反則などを知らせる以外は、通常のサッカーとルールは同じです。選手たちは手話やアイコンタクトで意思の疎通を図りますが、相手選手が近づいてくる音や気配が感じられないので、ひんぱんに周囲を見る必要があるなど、この競技独特の難しさがあるということです(朝日新聞,2022)。
実際にデフサッカー・デフフットサルの企画から運営まで経験したことのある清水さんは、「ろう者と健常者のコミュニケーションは、ボードを用いて円滑化しました。サイレントでのスポーツは、何とも言えない経験でした」と想起しています。
清水さんは、デフサッカー・デフフットサルなどの障害者スポーツを通して身体障害者を見る目が変わったといいます。「健常者と異なる目で見るのではなく、同じ人間として見るようになりました。異なる目で見る偏見は、子どもより大人の方が多いと思います」
昔に比べて、多様性と協調性が強く求められるようになった現代において、子どもはもちろん大人も身体障害者に対する考え方を改める必要があると感じます。
最後に清水さんが描く将来像をお伺いしました。「身体障害者と健常者の架け橋になりたいです。しかし、ゆくゆくは私を経由せずとも身体障害者と健常者が共存する世界が出来るとベストです」
「障害」という言葉に引きずられることなく共存の心を持ち、特別視しないことが肝要です。
参考記事
2023年6月4日・朝日新聞「最速時代 寺田制す」京都(11).