学生から見たG7広島サミット

昨日、5月19日から、G7広島サミットが始まりました。先進7カ国とEUの代表が一堂に集まり、ウクライナ情勢、安全保障、国際経済など幅広い課題を議論します。日本での開催は、2016年以来7年ぶりとなります。

広島から遠く離れた東京も厳戒態勢です。各地でコインロッカーやゴミ箱が閉鎖され、スーツケースを引く観光客が目立つ都心の駅でも、コインロッカーが使えない状態でした。

封鎖されたゴミ箱(5月19日、新橋駅、著者撮影)

 

手荷物預かり所(5月19日、東京駅、著者撮影)

東京駅では旅行者に向けた手荷物一時預かり所が臨時で設けられ、多くの人が利用していました。一方、構内には多くの警察官や警備員が配置され、厳重な警備体制が敷かれていました。

日常生活にも影響を与えるG7サミット。今回のサミットを学生は、どのように捉え、考えているのでしょうか。学生に取材しました。

13日に上智大学で、「公開授業 激動の時代とG7広島サミット」が開催され、主催した外務省によると、学生約500名が授業に参加しました。

講演は、2部構成で行われました。第1部では、国際的な安全保障について、細谷雄一氏(慶應大)と秋山信将氏(一橋大)による講演があり、その後、質疑応答が行われました。講演では、国際社会がかつてないほど分断される中で、世界史的に重要なサミットで、G7各国が押し付けではなく、一つの「価値」を国際社会が共有し、結束できるように促すことが求められているとの指摘がありました。そして、国際社会の連帯を促す接着剤として、「法の支配」に基づく国際秩序の構築が必要であることも述べられました。

第2部では、国際経済をテーマに、西濵徹氏(第一生命経済研究所)と細谷氏が登壇しました。米中のデカップリング(分離)などによって、国際社会の政治的な分断が進む中で、反対にデジタル分野や民間レベルでは、グローバル化が進行し、一層複雑になっていることが指摘され、先進国が相対的に衰退する中で「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国の存在感が増大しているということが述べられました。

会場の学生からは、多くの質問が寄せられました。例えば、「新興国を表す言葉に「グローバル・サウス」という言葉が用いられるものの、それらの国々は「一枚岩ではない」という留意がつけられることが多い。それならば、「グローバル・サウス」という言葉は、別の言葉で置き換えた方が良いのではないか」という質問に、登壇者は以下のように答えました。

実際、今回のG7サミットでは、「グローバル・サウス」という言葉を使わないという方向で動いている。この言葉は、一つのグループを表す概念として曖昧である一方で、インドがG7に対して、新興国の意見も聞くように促す戦略的に考えられた概念である。日本は、インドがそれを用いることを否定する必要はない。

この質問をした慶應大学4年生の萬田義和さんは、回答を振り返り、講演後に以下のように述べました。

「グローバル・サウス」という言葉を戦略的に使用することが重要であると、認識を新たにした。日本としては、積極的にこの語句を用いることを望むインドの意向を尊重するべきだ。曖昧な概念であることを理解しつつも、インドとの良好な関係を維持するため、この語句を戦略的に使用していくことが重要である。

さらに、萬田さんは、今回のG7サミットへの期待として、西側諸国が足並みを揃えて、既存の国際秩序を維持する姿勢を明確にすること。そして、核兵器の脅威が高まるなか、核兵器廃絶への想いを、日本から世界に向けて積極的に訴えることを挙げています。

参加した学生の中には、核軍縮の進展や国際社会の安定へ向け、今回のサミットに対して、期待の目を向ける学生もいました。

中央大学2年生の臼井大樹さんは、G7サミットに対して「価値観の違いを乗り越えて、世界各国が価値観の共通点から歩調を合わせ、戦争への徹底的かつ世界的な抗議や全人類の利益増進につなげてほしい」と平和への願いを込めました。

中央大学4年生の甲斐詢也さんは、「原爆資料館訪問が、首脳陣の心に響いて、G7間の温度差がなくなるよう」と期待を寄せています。

国際社会が不安定化する中での、G7広島サミット。歴史的な転換点を迎える国際社会で、日本は、議長国として、国際社会の分断を修復できるのか。今後の動向から目が離せません。

NHK『G7サミット前に外務省が特別授業 大学生らG7役割など学ぶ 東京』