やめて!もうやめて…―こぼれたって構わないわ。どうにでもなってしまえばいいのよ。―お医者様なんて嫌いよ。このまま死なせて。お願い。出て行って。一人にして。もう嫌なの。
不朽の名作『ローマの休日』。その冒頭で主人公の王女が、分刻みのスケジュールを伝えられて耐えられなくなるシーンのセリフだ。王女としての職務の厳しさと、人々には心の休息がいることがよくわかる。
新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に移行する直前のゴールデンウィーク。昨年と比べても一段と制限撤廃が進み、全国の行楽地は観光業者の嬉しい悲鳴が聞こえてくる賑わいだった。筆者も5月1.2日で家族で焼津へ。そこまでの遠出ではないが、久しぶりの旅行を楽しむことができた。
日本は世界の平均に比べて祝日が6日程度多いとされているが、現代日本人は王女に負けないほど忙しく、心が休まらないと感じているのではないだろうか。大型連休や年末年始などはあっても、どれも「与えられた」休みで「主体的な」休みではないからだ。
Twitterでは、筆者が住む藤沢市の名物観光地「江の島」の混み具合が話題になっていた。一歩間違えれば、昨年のソウル・梨泰院の惨劇を繰り返してしまいそうな雑踏ぶり。人との距離の抑圧がなくなり、密集状態に走ってしまうのだろうか。コロナ禍に慣れて人込みへの耐性がなくなった筆者からすると、このごった返しようで羽を伸ばせているのだろうかと疑問に思ってしまう。
「何よりも大事なのは、人生を楽しむこと。幸せを感じること、それだけです。」
ローマの休日で主役を演じたオードリー・ヘップバーンの格言だ。ローマの休日の作中でも、たった1日だが髪を切ったり、普段乗ることのないオートバイで街中を駆け回ったり、赴くままに生きていた。人生を楽しみ幸せを感じるために大事なことは、「休み」があることではなく、きちんと「休まる」ことのはずだ。
「働き方改革」という言葉を聞いて久しいが、本当に必要なのは「休み方改革」ではないだろうか。最近では週休3日など、何かと休みを増やすことばかりが注目されがちだが、もっと休み方についても考えるべきだ。明日からも仕事を頑張るために。
参考記事:
7日付 日経電子版
GW最終日「孫、初めて実家に」 成田も帰国ラッシュ – 日本経済新聞 (nikkei.com)
4月29日付 日経電子版
ゴールデンウィーク初日、コロナ前の日常へ 列島タイムライン – 日本経済新聞 (nikkei.com)
参考資料:
東海テレビ 「来年は3連休以上多いけど…専門家「日本は祝日多くても疲れが取れにくい」ポイントは“誰が休みを決めるか”」
来年は3連休以上多いけど…専門家「日本は祝日多くても疲れが取れにくい」ポイントは“誰が休みを決めるか” | 東海テレビNEWS (tokai-tv.com)