「米アマゾンが同社のクラウドサービスを通じて生成AIの提供」
「イーロンマスク氏がAI新会社を設立」
最近新聞を読んでいて、生成AIに関する情報が目に止まらない日はありません。話題の渦中にある最新技術は私たちの教育の場に、どのように変化をもたらしていくのでしょうか。
そもそも生成AIと言われてピンと来ない方も多いかもしれません。
「生成AI(英:Generative AI)は、画像、文章、音声、プログラムコード、構造化データなどさまざまなコンテンツを生成することのできる人工知能のこと。大量のデータを学習した学習モデルが人間が作成するような絵や文章を生成することができる」
NIKEEI COMPASSでは概要をこのように説明しています。代表的な生成AIである「チャットGPT」は入力スペースに指示や質問を書き込めば、日常会話や文章・グラフの作成、翻訳などの作業をします。
実際にどのようなことができるのでしょう。そこで「『鳴』という漢字の成り立ちについてわかりやすく説明してください」という質問をしてみました。回答は以下の通りでした。
「鳴」という漢字は、「なる」と読みます。この漢字は、「鳥が鳴く」という意味を表します。この漢字の成り立ちは、左側に「鳥」という意味を持つ部首があり、右側に「口」という意味を持つ部首が組み合わさっています。これは、鳥が口を開いて声を出す様子を表しているのです。つまり、「鳴」という漢字は、鳥が鳴くという様子を表しているのです。
非常に精度の高い回答だと感じました。成り立ちに焦点を充てた回答で、どんなイメージから漢字が成り立ったのかという点にまで触れているので、わかりやすいです。しかし「鳴」という漢字の部位の説明が左右逆になっています。
今度は「小学生がわかるように」とコマンドを増やして、同じ文字の成り立ちを尋ねました。
「鳴」という漢字は、「なる」と読みます。この漢字は、鳥や動物が鳴く様子を表します。この漢字の成り立ちは、左側に「鳥」という意味を持つ部首があり、右側に「口」という意味を持つ部首が組み合わさっています。つまり、鳥が口を開いて鳴く様子を表しているのです。小鳥が「ピーピー」と鳴いているイメージで覚えてみるとよいかもしれません。
内容に大きな変化はありませんが、小学生が想像しやすいように、「小鳥が「ピーピー」と鳴いているイメージで覚えてみるとよいかもしれません」という文章が加わっています。
その後もいくつかの質問を重ねてみました。わかったのは文章作成や算数や歴史といった質問の回答や解説、英語の発音や会話練習などを簡単にこなせることです。
授業中、一人の生徒を教師が付きっ切りで見るということは非常に難しい。そのためチャットGPTなどの生成AIが導入されれば、「わからないことをその場で解決」「一人ひとりに合わせたペースで勉強を進める」といった点から、授業の質や効率の面で期待できそうです。また教壇に立つ教師の負担の軽減も図ることができるのではないでしょうか。
ただメリットばかりではなく、懸念もあります。東京大学の太田邦史副学長は「書かれている内容には嘘が含まれている可能性があります」と指摘しています。実際「鳴」という漢字の成り立ちにも、部位の位置について偽りが含まれていました。
尋ねた質問について正しい情報を持っていない場合、パソコンやスマホから返ってきた回答を鵜呑みにしてしまうかもしれません。小学校の低学年では知識量も限られているため、正誤の判断が難しいように思います。
また個人情報や著作権の問題についても留意しなければいけません。チャットGPTはwebサイトやSNSを情報源にしています。そのため個人情報が含まれている可能性は無視できません。実際、イタリアでは一時禁止、フランスやアイルランドなどもプライバシーの観点や著作権侵害の恐れから規制に動いています。
文部科学省はチャットGPTについて学校現場での活用方法や注意点をまとめた指針を作る方針です。いつ頃示されるのか、といった細目は現時点では明らかではありません。
「TOKYOデジタルリーディングハイスクール事業」を手掛ける東京都教育委員会など、大きな教育コミュニティを中心にAIの活用を図る地域が少しずつ増えているように感じます。個人の利用が急激に増える前に、学校現場の指針を作成しなければなりません。
参考記事:
7日付朝日新聞朝刊25面(社会)「学校でチャットGPT、指針策定へ 考え深める道具に 文科省」
12日付朝日新聞朝刊26面(社会)「チャットGPT 東大「変化を先取りして」 学生らに呼びかけ、懸念点も指摘」
14日付朝日新聞 朝刊7面(経済)「チャットGPT 禁止解除へ条件 イタリア「利用者の同意を」」
15日付読売新聞朝刊2面(総合)「チャットGPT 欧米で規制論 EUが専門部会 情報無断収集に懸念」
15日付朝日新聞朝刊 6面(経済)「アマゾンも生成AI IT企業の競争激化」
16日付朝日新聞朝刊7面(外報)「マスク氏、チャットGPTに対抗 AI開発へ新会社 海外報道」
参考資料:
NIKEEI COMPASSー日本経済新聞「生成AI(ジェネレーティブAI) 」
uteleconオンライン授業・web会議ポータルサイト@東京大学「生成系AI(ChatGPT, BingAI, Bard, Midjourney, Stable Diffusion等)について」