「スーパーサイヤ人の手でしょ、これ」
「現代建築は形にとらわれないですからね」
この2つの台詞だけ見て何の解説かわかるだろうか。正解は将棋だ。1つ目が2021年竜王戦2組ランキング戦決勝、2つ目は今回の名人戦第1局の大盤解説。将棋の解説だと気づいたあなたは、相当な将棋ファン間違いなしだ。
先日第81期名人戦の第1局が戦われた。お互いが1、2時間かけて考えて着手する長考合戦が続く濃密な対局。まさに名人戦にふさわしいスタートになった。ただ、今回触れたいのは将棋の内容ではなく「解説」の方だ。日の目を見る機会は少ないが、注目してみると面白さにきっと気づいてもらえる。
<解説には2パターンある>
あくまで個人的な見解だが、将棋の解説には2パターンある。丁寧に手順を解説してくれる「勉強解説」と、軽妙なトークを交えた「盛り上げ解説」だ。最初にフレーズだけ紹介した2つは、後者にあたる。どちらが良いとか悪いとかいうことはもちろんないが、将棋があまりわからない人にも楽しんでもらいやすいのは盛り上げ解説の方だろう。
朝日新聞の記事には、地元の将棋教室に通う8歳の男の子が解説を聞いて「ギャグっぽくて面白かった」と笑顔を見せるシーンが紹介されている。今回の名人戦の大盤解説では、子供でも楽しめるような盛り上げ解説だったことがわかる。
<長い…けどそこが良い!>
今回の名人戦第1局の大盤解説はYouTubeにアーカイブがある。(https://youtu.be/eBnxhR46Aic) リンクを開いてもらえばわかるが、なんとその長さは7時間6分10秒。「ひえ~」と思わず声が出てしまいそうなほどだ。ショート動画が流行るこの時代の動画のトレンドに逆行している。いや、逆行しすぎていると言っても過言ではない。
でも勇気をもって再生ボタンを押してみてほしい。まずは、プロ棋士はこんなにも長い間考えに耽っていることを疑似体験できる。そしてこの時間感覚になれてきたら、ぜひリアルタイムでも解説を見てみてほしい。ABEMAでは追っかけ再生、その他テレビ番組でも見逃し配信などが当たり前。そんな時に、時間の無駄とも思えるほど延々と見続けた先でぽっと出くわすあの名解説の瞬間。上手く言葉にできない自分がもどかしいが、あのときほど幸せな瞬間はない。
ちなみに今回の大盤解説の動画では、4時間58分40秒からの30分間くらいの解説がとにかく面白い。何も将棋を知らない人でも絶対に笑えるのでぜひ見てみてほしい。
オタク感全開の記事にどれだけの人が最後までついてきてくれたか不安だが、少しでも多くの人が将棋解説に興味を持ってくれたら嬉しい。その虜になったなら、「今回の解説は勉強解説かな、それとも盛り上げ解説かな。」、そんなことを考えながらきっと、筆者と同じようにワクワクが止まらなくなるのでご注意を。
参考記事:
7日付 朝日新聞朝刊 26面(社会) 「藤井竜王、長考戦制す」
参考資料:
囲碁将棋TV-朝日新聞社-
【大盤解説Live】渡辺明名人-藤井聡太竜王 解説・佐藤天彦九段、聞き手・飯野愛女流初段【第81期将棋名人戦第1局】 https://youtu.be/eBnxhR46Aic