16日に横浜市立大学の名誉教授で「レビー小体型認知症」を突き止めた小阪憲司さんが亡くなりました。この病気は記憶や動作に障害をきたしたり、見えないものが見えてしまう幻視の症状が現れたりします。レビー小体という異常なタンパク質が脳にたまることで発症します。患者数は推定80万人で、高齢の認知症患者の5人に1人がこの型だとされています。
一般的な認知症といえばアルツハイマー型が挙げられるでしょう。こちらは新しいことが記憶できなくなったり、時間や場所がわからなくなったりするものです。高齢者の認知症としては最も多く、知名度が高いことから認知症イコールアルツハイマー型のように考えられています。一方のレビー小体型はあまり知られておらず、周りから患者への理解がされず支援が難しい状況にあります。
筆者がレビー小体型認知症の存在を知ったのは昨年11月に明治大学で行われた「GJS(国際日本学部の略称)デイ」で設けられたVR体験のコーナーがきっかけです。植木やギターが人に見え、自室に知らない人がいるような錯覚をする。患者の実体験をもとにして作られたVR動画を視聴しました。映像の作り方もあるのでしょうが、ホラー映画を見ているような感覚でした。映像や文章よりも患者の症状を身近に感じられ、理解を深めることができました。
VR動画を見ている筆者 昨年11月
運営している団体は書籍やビデオ映像ではレビー小体型の大変さは伝わりにくいということで、VR体験の普及を推進しているそうです。人は情報の8割を視覚から得ているといいますし、VRを用いた教育は今後拡大していくことでしょう。
もう一つ、VR×教育という文脈で親和性が高いと感じるのが薬物乱用防止教室です。中学、高校生の時、地元警察や生徒指導の教員が開催し、体育館に集められた全校生徒が動画や講演を視聴しました。動画では離脱症状で壁から白い虫が大量に出てくる幻覚の症状が紹介されていました。その他にも不快な幻覚が出ることが多く、禁止薬物を絶対に使わないように教えられました。
薬物を使っても下手をすると不快感に襲われるそうです。気分が沈むダウナー系の薬物ではまるで地獄にいるような、地面にめり込んでいくような感覚に陥ります。気分が悪くなり嘔吐することがあるようですが、意識がはっきりとしないため窒息し、最悪では死に至ります。気分が上がるアッパー系を使うと気持ちが空に飛んでいき何でもできるような感覚になり、楽しく不快感はないようですが、交通事故などで死ぬこともあります。
こうした様子をVR映像で見せることは確実に薬物乱用の抑止につながるでしょう。誰も気分が悪くなったり、死んだりしたくないはずです。どうなってしまうのかわからないからこそ好奇心が生じて、手を出してしまいます。VRでそうしたネガティブな部分を実体験のように伝えることで悲劇を防ぐことができるのではないでしょうか。
都内の大学に在籍すると禁止薬物と遭遇する機会が少なくありません。大学の先輩が飲み会に大麻の含有成分であるTHCを含む電子タバコを持ってきたため、その後はこの人と関わるのをやめたり、留学生の友人が中野駅前の喫煙所で吸っていたのが大麻を含んだ巻きたばこで危うく吸いかけたり。学生が薬物所持で逮捕されることがニュースで稀に流れますが、氷山の一角でしかないのでしょう。また、筆者の友人が3月に大麻が合法のタイに卒業旅行に行き、日本人主催の大麻を吸うことを目的としたフェスをのぞいたら、周りはコカインやMDMAなどのより危険度の高い薬物を使用していたといいます。
周りが使っているのだから少しだけという安易な気持ちを振り払うには、強い精神力が欠かせません。それを培うためにも、お説教だけで終わる安易な薬物防止教室ではなくVRなどを用いたより衝撃の大きいものに変えなければなりません。
参考記事
読売新聞オンライン 「パーキンソン病「原因」 高齢者1/3に蓄積…「レビー小体型認知症」も」
https://www.yomiuri.co.jp/medical/20201105-OYT1T50144/
新潟労災病院 ろうさいニュース「レビー小体型認知症」
http://www.niigatah.johas.go.jp/about/archives/2014-01.html