留学は米国?英国?いや、マレーシア!【中】

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留学は米国?英国?いや、マレーシア!【上】

 

 

■マレーシア独特のカルチャー

語学力向上以外にも、海外進学には大きなメリットがあります。海外のカルチャーに、どっぷり浸かれることです。マレーシアでは、ヒジャブを被った女性にも、タンクトップに短パンの女性にも、スプーンを使わず手で食事をする人にも、街中で当たり前に遭遇します。筆者も、お土産屋を買おうとした時、ムスリムの店員さんが目の前でお祈りを始め、それが終わるまで待った経験がありました。多民族国家だからこその、宗教的、文化的、政治的な違いを肌で感じることができるでしょう。

スーパーは基本ムスリム仕様。ほとんどの製品に、イスラム教で禁止されている成分が一切含まれていないことを示すハラル認証のマークがついています。豚肉やお酒のコーナーもあるものの、奥の一角の別スペースに設けられています。フードコートも、ムスリム用とチャイニーズ用は通路を挟んで完全に分離しています。

様々な種類のカレーを取り揃えた「ママック」と呼ばれるインド系ムスリムの食堂があれば、その隣に麺料理やお粥など、バラエティ豊かな中華料理屋が並ぶ食堂も。少々味が濃くてこってりしたものが多いため、健康的に過ごすのなら自炊も必要だと思いますが、学業に疲れても気軽に食事を済ませられるローカル食堂の存在は魅力的です。

▲Penan Prawn Mee(ペナンプラウンミー)。中華系の食堂にて。

▲マレー風やきとり、サテー。牛肉を食べないヒンドゥー教徒も、豚肉を食べないイスラム教徒も楽しめる。スパイスで味付けして焼き上げた鶏肉に、甘めのピーナッツソースを絡めて食べる。

 

■リアルな多民族国家に触れる

多文化を味わえる一方で、民族間の摩擦に触れる場面もあります。マレー系、中華系、それぞれと関わりのある友人は、しばしばレイシストに出会うと言います。タクシーに乗った時は、マレー系の運転手が「よかったね僕がマレー系で」と悪びれることなく中華系への差別的な発言を。中華系の友人も、何気ない会話の中でマレー系を蔑むような話をしていたそう。傾向として、マレー系はどんと構えてのんびりゆったり過ごす方が多いのに対し、中華系は幼い頃からビジネスに勝つための教育を受けており、競争精神あふれる方が多いと言います。それぞれに良さがありますが、それを悪く捉え、「怠惰」「せこい」という印象を持っている人も互いに一定数いるようです。

また、政治の面でもそれぞれの民族に不満が見られます。中華系の人々は教育熱心が功を奏し、経済的にも裕福な方が多いため、マレーシア社会の富を牛耳っていました。それに対し、「あくまでマレーシアはマレー系の国」という意識があるマレー系国民が反発したことから、マレー系への優遇政策「ブミプトラ政策」が取られています。国立大学ではマレー系以外の入学枠が狭いため、いくら頑張っても好きに学ぶことができない、ということがあるようです。このようなことは、日本にいてはなかなか想像できないのではないでしょうか。

 

■政治体制の違いを学ぶ

また、一般的な世俗法とは別に、イスラム教の戒律に基づく「シャリア法」「宗教警察」というものも存在します。中東などのイスラム圏と比べると比較的厳しくないようですが、都会で、ヒジャブを被っている女性が飲酒したり豚肉を食べたりしていれば取り締まられます。私が街中で「LGBTQに対してはどういった認識なんだろう」と日本人の友人に聞いたときは、「その単語を大きい声で言わない方が良いよ」と注意されました。

以前、同性愛を理由に有罪となり、公開の場でつえで打たれる刑が課されたり、LGBTQの存在を知ってもらうためのデモの主催者が逮捕されたりしたそうです。今まで筆者は宗教問題について「お互いの信じることを尊重すれば解決するのに」「もっと科学的な思考も取り入れたらいいのに」などと軽く考えていましたが、強く信仰している方々と触れ合うと、理想論を実践することがいかに難しいことなのか、少し理解できました。そもそも宗教とはどういうものなのか。宗教観の違いはどんな課題を生んでいるのか。世界で起こる争いの当事者たちはどんな感覚を持っているのか。ますますグローバル化が進む社会において、知る必要度の高い問題だと思います。

また、民主主義という形ではあるものの政府の支配は強く、先進国ほど言論の自由が保障されていなかったり、コロナでのロックダウンの強制力が強かったりもします。政治的、宗教的課題に興味のある方は、日本と違った体制を見ることで多くの学びを得られることでしょう。

 

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