「会社の中のことをもう少し詳しく知りたいのですが、内定者用のバイトはありますか?」
「入社してからいやと言うほど中のことはわかりますから、ぜひ残りの学生生活を好きなことをして過ごしてください」
ありがたいことに筆者は早期に内定をいただけた。「入社前に成長」などという高貴な目標があったわけではないが、入社までには時間がある。ならば自分の行く会社について知ることはマイナスにならないと思い、内定者用のアルバイトを問い合わせたら人事部門の方から学生生活を謳歌するようにと背中を押してもらった。
9日付の日本経済新聞の夕刊によると、23年卒内定者の約18%がアルバイトなどの実務経験を積む機会が欲しいと答えている。
もちろん、入社前にスキルや知識を身につけることは悪いことではない。しかし、これまでの知識が使いものにならなくなったり、逆に新しいスキルが必要になったりするかもしれない。明日も読めないほど不確実な今の世界で、先を急ぐことにどれだけの意味があるのだろうか。
今やってみたいことをやろう。そう思い立った筆者は、家族でよく行く蕎麦屋で働き始めた。初めての飲食系での仕事。言葉遣い、レジ打ち、お酒の注ぎ方、まだまだ上手く出来ずに怒られてばかりだが、全てが新鮮で刺激になっている。
常連さんとの会話をこなしながら、お客様が注文をしようとしていないかアンテナを常に張ること。メニューについて聞かれた時、伝わりやすい様に工夫すること。忙しいタイミングで複数のことを同時にこなす瞬発力。よく考えると、「やりたい」で始めたはずの蕎麦屋でのアルバイトには、筆者の就く仕事に必要なことが詰まっている。
やりたいことや好きなことに思いっきり打ち込むからこそ、見えてくる世界もある。キャリアの最終目標はきっと「なりたい自分になる」こと。そのために無駄なことなど1つもない。
参考記事:
9日付 日本経済新聞夕刊 10面(くらしナビ) 「内定者『入社前に成長』と焦り」