東急百貨店本店が31日の今日、店じまいしました。1967年から半世紀以上にわたり営業してきたものの、建物の老朽化が進み、解体が決まりました。跡地に東急が建設するビルに入居するのは外資系のラグジュアリーホテルだそうです。一帯はインバウンドや富裕層を意識した街づくりへ生まれ変わります。渋谷にキャンパスを置く大学に4年間通い続けた筆者としても、馴染み深いデパートでした。
本日の朝刊をめくると、日経では解体に伴い渋谷の宿泊インフラの整備が動き出すことが報じられ、朝日は電鉄系百貨店とターミナル駅の関係や、東急百貨店の最後の姿を見に駆けつけた来客について取り上げています。東急百貨店と一口に言っても、その歴史の長さから、取り上げるべき視点も様々であることが伺えます。
開店の20分前から周囲には平日とは思えないほど長い行列ができていました。キー局を始めとした報道陣も大勢います。開店を待っている人の多くが華やかな装いをしたマダムたちです。筆者の後ろにいた中年の女性は、その行列に驚きながら、「セールになったブランドを買いに来た」と話してくれました。
そう、閉店に伴い感謝祭セールも目白押しです。7階のMARUZEN&ジュンク堂書書店は本日50%オフです。
「たくさんの想い出、ありがとうございました!」という張り紙には、幼い子供から大人まで、別れを惜しむ書き込みがいっぱいです。
併設するハンコ屋には、店主の方にしばしのお別れを告げに来たお得意さんの姿もありました。これには思わずほっこりします。
3階の丸福珈琲店の女性従業員は、「どこの飲食店もいつも以上にお客さんで混んでいますね」と気合に満ちた表情を見せてくれました。親子が厨房の前で、何やらお礼を言う姿も印象的でした。
ペットサロンとガーデニング店が備わった屋上では、青空を背景に「東急本店」の看板を撮ろうとスマートフォンを掲げる人々が代わる代わるやってきました。「写真見返したら寂しくなっちゃうな」。声のするほうへ目をやると、写真を撮りあう仲睦まじそうな夫婦がいました。「お撮りしますよ」。筆者は取材を忘れ、思わず声をかけていました。
ベンチで看板を見上げる女性(79)は、「娘に今日で終了すると聞き、3日連続で川崎から遊びに来た」と言います。地元岡山県から出てきたこと、初めて東急百貨店に訪れた時に食べた喫茶店の味などを教えてくれました。「今日で最後ね。色々と話し込んでごめんなさいね」。そう言いながら女性は屋上を後にしました。
入り口には、筆者が店を出た午後3時ごろでさえ人だかりができていました。数時間の滞在でしたが、行き交う人々それぞれにドラマがあったように思えます。今日、一つの物語に幕が下りました。4年後の未来へ期待したいものです。
参考記事:
本日付 朝日新聞朝刊 埼玉13版 9面「電鉄系百貨店 どこへ行く?」
本日付 日経新聞朝刊 埼玉12版 14面『渋谷「泊まれる街」に』