数日前のこと。何気なくテレビをつけていると、就活テストを替え玉受検した疑いで、会社員の男性が逮捕され、代行を依頼した女子大生も書類送検されたというニュースが飛び込んできました。これには目を丸くしました。
「女子大生が気の毒」
私が最初に抱いた感情です。
WEBテストの代行は以前から囁かれてきました。今回のような業者にとどまらず、友人同士で協力して解きあったり、頭の良い知人に替え玉受験を依頼したり…WEBテストの解答をエクセルにまとめた解答集なるものも、私が就活生の頃から当たり前のように横行しています。テスト中にエクセルの検索機能を使えば、答えがすぐに出てくる仕組みです。試しに「PayPayフリマ」で検索をかけると、500円から3000円で売買されていることがわかります。
替え玉が入り込む隙があったことには、企業側にも反省の余地があると思います。厳重な本人確認が必須の会場試験や、カメラ付きのWEBテストでなければ、必ず不正をはたらく志願者が現れることは予想できます。そんな状態を馬鹿らしく思い、代行を考える就活生の気持ちも痛いほど理解できます。
WEBテストがどこまで選考に加味されるのかは分かりませんが、面接の一歩手前で実施されるケースが多いように思えます。ただでさえ就活は、数値化されて合否の決まる大学入試などと違い、不明確な部分が多いのです。黙認されてきた理不尽な現状からすれば、「面接に何とか漕ぎ着けたい」という焦りから手を伸ばす就活生はこれまで大勢いたと考えます。いや、実際大勢目にしてきました。
筆者も、過去にSNSで代行業者のアカウントが幾つか回ってきたことがあります。年明けの追い詰められていた時期に目にしたため、気持ちが揺らいだのも事実です。個人IDを渡すことへの警戒感から最終的には利用しませんでしたが、一歩間違えれば犯罪者になっていたかもしれません。「入社してから苦労する」という声も多くありますが、一生がかかる就職活動において、それは綺麗事に過ぎないように思えます。
また、「WEBテストはいざという時に協力してくれるような友人がいるかを試す」といった情報も何度か耳にしたことがあります。一概には言えないでしょうが、不正を込みでWEBテストを取り入れている企業というのもあり得る話です。
そんな訳で、言わば見せしめのように吊し上げられた女子大生は不運と言えるかもしれません。各紙では、当の女子大生が10万円ほどの大金を支払った事実が報道されていました。その額からも、いかに追い詰められていたかが伺えます。
Twitterを見ると、「就活生につけ込む業者が悪い」「不正をはたらいた女子大生が悪い」、そんな声が飛び交っています。もちろん、人の手を借りずにまじめに受験している就活生もいる中で、彼女たちの行動は「悪」なのかもしれません。しかし、これまでの採用方法にも問題があったように思えてならないのです。
参考記事:
22日 朝日新聞夕刊 埼玉4版 1面 「就活不安 替え玉受験横行」
23日 日経新聞朝刊 埼玉14版 3面 「ウェブ試験の弱点露呈」
23日 読売新聞オンライン 『大手商社・広告・コンサル…就活替え玉受験、有名企業を列挙して「成功実績」アピール』