人を作るものってなんだろう

サッカーW杯での勝利に、日本中が沸いています。カタールで開催中の第22回ワールドカップ。一次リーグの初戦で強豪ドイツと対戦した日本は、前半に1点を失ったものの、後半に2点を奪い返し、王者を相手に勝利をあげました。ドイツは、W杯で優勝を4度経験しています。日本が、優勝国に勝つのは初めてでした。

各紙の一面で勝利の模様が大きく取り上げられていますが、22日付の朝日新聞の社会面には、吉田麻也選手の人物に注目した記事が小さく載っていました。

タイトルは「立場が人を育てた 吉田の4年」。日本代表のリーダーという立場が、どのように吉田選手を変えていったのかを特集していました。もちろん記事に書かれていることが全てではありませんし、彼には他に言いたいことがたくさんあるかもしれません。しかし、立場が人を作るというのは、大いなる真実ではないでしょうか。

大学の総合型選別(AO入試)や就職活動で重視される「リーダー経験」。筆者は、総合型入試を経験したことがありますが、リーダーらしい経歴がないと、志望理由書を書く際になんだか心もとなく感じるものです。肩書き欲しさに、「部長」や「サークル会長」を務めている人もいるかもしれません。しかし、理由が何であれ、人の前に立つ経験は自身を成長させてくれるものです。

高校を卒業すると、一気に「自由」が増えます。しかし同時に、それは自分の行動を全て自分で決めなくてはならないことを意味します。起きる時間や食べる物、さらには授業の出欠席まで。でも、それだとなんだか怖くて、結局は自分を縛ってくれる、単純に従えばいいスケジュールを求めてしまう。これが、多くの学生がバイトを詰め込む理由のひとつかもしれません。私もそうです。

ところが、「リーダー」になったら既存の何かに従うだけでは済みません。自分の手で、「自由」のなかに目標や計画を書き込み、結果を出すことが求められます。

吉田選手は、「日本のサッカーのためにやれることは全てやる」と、先陣を切って取り組んだといいます。後輩に海外の厳しい環境に飛び込んでいってほしいと伝えるため、合宿の食事会で即席英語教室を開催。日本代表を身近に感じてほしいと、練習の光景や試合の裏側を伝える動画の掲載を協会側に説得。圧倒的な行動力に感銘を受けますが、彼をつき動かしたのはチームメイトを率いる強い意識でしょう。

最近の日本では、冷笑主義の風潮が少なからず見られます。「リーダーなんてやるの?」「どうせ就活目的でしょ?」。そう囁く人が周りにいるかもしれません。しかし、始動するという立場に身を置き、その意識を一度でも持ったことのある人は、他と違う強さを持っていると思います。自由な大学生活だからこそ、ちゃんと「自由」を自分のものにしたい。そう思う今日この頃です。

 

 

参考記事

24日付 朝日新聞朝刊(北海道14版)27面(社会)「立場が人を育てた 吉田の4年」