価格、機能、ブランド価値… 商品選びの基準は何ですか?

インターネットでいくつもの店舗を比較することで希望の商品が安く買える時代ですが、価格だけに注目するなら、新製品が出た直後に値引きされる旧モデルも選択肢の一つです。特に、家電量販店で販売されるカメラやオーディオプレーヤーは、毎年のように新機種が発売されます。最新モデルの隣で、旧製品が値引きされている様子を見たことがある人もいるでしょう。

20日付の読売新聞には、パナソニック社が値崩れ防止戦略として「指定価格制度」を導入していることが紹介されていました。販売店からメーカーに返品可能という条件のもと、値段を指定して売るもので、メーカーによる直接販売とみなされます。現在はドライヤーや洗濯機などの上位機種が対象ですが、2022年度中には商品全体の20%まで広げたいと報じられています。

実際に家電量販店に足を運ぶと、パナソニック製品の上位機種は値引きされないなど、他とは違った売り方なのがわかります。大手家電量販店が独自に店を構えるアウトレット店(ヨドバシアウトレット、ヤマダアウトレットなど)に確認しても、上位機種の在庫はなく、取り扱っていない店舗が多いようです。やはり、高級機種は指定価格でしか購入できないのでしょうか。

 

本来、メーカーが販売店に納めた商品に対して、売値を指定することは独占禁止法の「再販売価格の拘束」にあたり禁止されています。売れ残ってもメーカーに返品できず、店が一方的に在庫のリスクを背負わされるからです。また価格が指定されると競争が発生しなくなり、消費者には安く買うことができなくなる懸念もあります。今回のパナソニックの商法は、商品を販売店が返品できるようにして在庫リスクをパナソニックが負うことで、独禁法には違反しないというものです。

2012年にはアパレルメーカーのアディダスジャパン、2016年にはキャンプ用品のコールマンジャパンが再販売価格を指定したとして、公正取引委員会から排除措置命令を受けています。また、今年3月にはラーメンチェーン店の「一蘭」が自社ブランドのカップ麺について、希望小売価格の490円で売るよう店側に求めたことで、違反調査を受けていることが報道されました。

 

メーカー側にとっては一定の価格水準を維持したい事情があります。値崩れを放置すると、次期の新商品の価格まで安くなってしまう懸念があるからです。

家電の価格は販売開始時がピークで、小売店同士の競争もあって徐々に下落する。1年で2割ほど下がるとされ、メーカーは売価を戻すため短期間に新商品を開発する必要がある。パナソニックの品田正弘社長は「新制度によって製品の寿命が延び、競争力のある製品の開発に集中できる」と説明する(20日付読売新聞より引用)

 

他社に先駆けて、値下げに頼らない「商品の価値」で消費者に選んでもらう道を選んだパナソニック。私たちに商品選びの基準を問いかけているように感じました。

 

参考記事:

20日付 読売新聞朝刊(埼玉12版)7面「パナ『指定価格』 普及未知数」

7月19日付 日経電子版 「パナソニック、ダイソンに反論 ドライヤー広告提訴で」

6月9日付 日経電子版 「ダイソン、パナソニックの広告差し止めを求め提訴」

3月29日付 朝日新聞デジタル 「『一蘭』を公取委が違反調査 490円カップ麺など価格強制した疑い」

 

参考資料:

公正取引委員会 独占禁止法法的措置一覧(平成23年度)

公正取引委員会 独占禁止法法的措置一覧(平成28年度)