先週、アルバイト先の帰り道、新橋駅からいつものように電車に乗り込むと、突然怒号が聞こえてきました。咄嗟にイヤホンを外し、顔を上げて声の響く方に目をやると、サラリーマン風の中年男性と酒に酔った高齢男性が口論していることに気付きました。段々と怒号は大きくなり、側にいた乗客が逃げるように少しずつ移動を始めます。様子を伺っていると、今にも手を出さんばかりの大喧嘩に発展していきました。そんな折、「SOS」と書かれた赤いボタンを押す女性が現れたのです。
電車内でトラブルが発生した際、乗務員に緊急事態を伝える「非常通報ボタン」。車両の隅に設置されているこのボタンを、誰しも一度は目にしたことがあると思います。けれども、その使い方を知っている乗客は多くはないでしょう。
女性が押すと、ボタンの向こうから「どうしましたか」と声が聞こえてきました。壁にはスピーカーとマイクが埋め込まれており、乗務員と会話ができるようです。女性は、乗客が車内で大声を上げて喧嘩をしていることを話し始めました。そのお陰で、次の駅に停車するタイミングで扉の前に待っていた駅員が男性2人を連れ出し、ことなきを得たのです。私も含め、同じ車両にいた乗客たちの安堵した表情が印象的でした。
調べたところ、非常通報ボタンは乗務員と通話可能なタイプと乗務員室に表示が出るタイプの大きく2つに分けられることが分かりました。前者の場合、乗客からSOSを出された乗務員は、通話の内容を指令室に報告し、対応する流れとなっています。車外のオレンジ色の車側灯が点灯するほか、乗務員室ではブザーが鳴るそうです。
〜ボタンの使用例〜
・急病人が発生したとき
・不審者や不審物が発見されたとき
・その他の緊急事態が発生したとき
今回は他の乗客を巻き込むほどの大事には至りませんでしたが、もしものことが起きた場合、あの女性のように冷静に行動できるでしょうか。京王線での刺傷事件や喫煙を注意した男子高校生が暴行を加えられる事件など、ここ数年だけでも電車内でのトラブルは跡を絶ちません。筆者は他人の喧嘩でもビクビクしていたくらいです。パニックになり、正常な判断ができないことも十分に考えられます。だからこそ、1人でも多くの人が緊急事の正しい対策を身につける必要があると感じました。乗客全員が非常通報ボタンの存在を知っているだけでも大きく変わってくると思います。
日本初の鉄道が1872年に開業してから14日で150周年を迎えました。3紙では世界有数の「鉄道大国」である日本を紹介する記事や、この日を記念した各企業のイベント情報が満載です。
鉄道は日々私たちの生活を支えてくれるかけがえのない存在、どうかこれ以上被害に遭う乗客が出ず、穏やかな日常を運んでくれることを願っています。
参考記事:
本日付 読売新聞朝刊 埼玉14版 1面 「鉄道開業 きょう150周年」
本日付 朝日新聞朝刊 埼玉13版 19面 「鉄道開業150年のあゆみ」
本日付 日経新聞夕刊 埼玉4版 9面 「鉄道駆け抜け150周年」
2021年11月8日 読売新聞オンライン『殺傷事件発生、何度も押された非常通報ボタン…「どうしましたか?」車掌への応答なし』