「個性的」であることだけが個性じゃない 就活で気づく自分の「カラー」

2001年に出版された中屋美和さんの絵本『くれよんのくろくん』。もしかしたら小学生のときに読んだことがある人もいるかもしれません。

(Amazon公式サイトより引用)

箱の中に一式揃ったクレヨンたち。真っ白な画用紙を見つけて、きいろくん、ピンクちゃん、みどりくん、それぞれ思い思いの絵を描き始めます。しかし、みんな自分たちのカラフルな絵を汚されたくないと、くろくんを仲間外れにしてしまいます。

就活で企業に提出するエントリーシート(ES)にはいつも「学生時代頑張ってきたこと」「自己PR」「趣味特技」など、志望者の人となりを知るための設問が用意されています。いざ書くとなると、手が止まってしまい、「ES書くのしんどいな」といつも思ってしまいます。インターン先で「大学2年で学生団体を立ち上げた」といったツワモノ就活生などを目の当たりにすると、これが私の強みだというのなら、せめてこのくらいパンチのあることを言わないと、とつい自分を大きく見せようと考えてしまいがちです。

ESも面接も、個々人の「その人らしさ」を見るためであることは分かります。とはいえ、これまで重ねてきた選択、決断は、ESのネタになるかどうかで決めているわけではありません。そもそも個性って何なんでしょう。ESに頭を悩まし、ぐるぐる考えていると、ふとそんなことがよぎります。しばしば聞く「子どもの個性を伸ばす教育」なんて言い回しも、品行方正なことを言って気持ちよくなってるだけではと感じます。もちろん個性を伸ばすことが悪いとは思っていません。それと同時に、出る杭が打たれないように個性を受け入れる教育も必要なのではないかと思うのです。

就活では、自分の持つ性格のニュアンスを伝えることの難しさをつくづく感じます。個性のために生きているのではなく、どんな形であれ身に付いたものが個性なんだと思います。そのために、自分を見つめ、強みやウィークポイントを知ることが大切なのでしょう。就活用語の「自己分析」という言葉は胡散臭くてなんだかあまり好きではありませんが、詰まるところは同じです。

画用紙の色とりどりの絵の上から黒を塗ることで、綺麗な花火のスクラッチアートを完成させたクレヨンのくろくんのように、私も深掘りしていけば味が出るような自分なりの「カラー」を持った人間になれるのでしょうか。いよいよ挑戦です。

 

参考記事:

10月3日読売新聞オンライン、『[就活ON SPECIAL]2023年卒 内定者 オンライン座談会…学生4人経験語る