BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)—今買って、あとで払う。年齢制限なく気軽に使える後払いサービスの利用が拡大する中、米国でルール整備の動きが広まっています。若年層のトラブルの多発、10人に1人が支払いを遅延、といったさまざまな綻びが見えてきたためです。日本国内で実際に「atone」「paidy」などのサービスを利用する筆者も、以前から法整備の必要性を感じていました。
BNPLサービスは、気軽さを売りにしてここ2〜3年の間で広がり始めました。「今欲しいものを、後払いする」と聞くとクレジットカードが第一に思い浮かびます。ですがBNPLサービスとクレジットカードには主に二つの点で明確な違いがあります。
一つ目は、与信審査の有無です。BNPLサービスは与信審査を必要とせず、電話番号、メールアドレス、氏名の登録をした瞬間から即時利用可能です。年収の申告、身分証の提示が求められるクレジットカードと比べて利用にあたってのハードルの低さは一目瞭然です。二つ目は年齢制限の有無です。クレジットカードは18歳未満では申し込みできないのに対してBNPLサービスは年齢制限が一切ありません。この年齢制限がないという点こそが問題の温床ではないでしょうか。
実際に筆者もサービスを利用していますが、入り口が「気軽すぎる」分、全てにおいて責任の実感が薄いという恐ろしさがあります。以前、後払いサービスの振り込みを1件忘れただけで法律事務所から連絡が来たこともあります。金額は1000円程で、3ヶ月前の支払いを済ませた気になっていたことが原因でした。その後、見直してみると大量のメッセージの中に「支払いがあります」という表示を見つけました。詐欺メッセージが多いSMSからの連絡だったため入念な確認を怠ってしまいました。また、電話がかかってきた際は見知らぬ番号のため不審に思って呼び出しに応じませんでした。
そうするうちに書面が届き、そこに記載された電話番号と今までの通知が一致していたことで法律事務所が代理手続きをする債務者の立場に陥っていることに気づきました。慌てて電話したことを今でも覚えています。ここでの対応は非常に優しく、「明日払えたら払ってくださいね」の一言で終わりました。支払いが滞ると信用に傷がつくということをしっかりと習っていたから良かったものの、これが中学生の頃ならば「まあ、いいか」となりかねないほどの穏やかなものでした。延滞手数料が100円ほどというサービスもあり、一部の未成年にとっては、債務の泥沼にはまり込みかねないと感じます。
利用する立場だからこそ10人に1人が支払いを遅延し、そのほとんどが若年層であるというデータには納得感があります。大半は振り込み期限の見落としだとは思いますが、もしも「払わなくても大した目に合わない」という驕りからくる未入金や返済能力以上の借り入れならば問題は深刻です。
年齢制限なく数万円単位の高額な利用ができるサービスだからこそ高校生、中学生の年齢では5000円の利用ごとに親に通知が行くよう設定するなど、家族と連携した取り決めの必要性も感じます。金銭の教育を十分に受けていない若年層のうちから欲しいものを買う衝動性を刺激すると、買い物依存症を誘発しかねないと筆者は感じます。年齢制限がなく、与信審査のない状態で利用できる借金だからこそ「依存症」や「過剰債務」対策は怠るべきではなく、もっと厳しい対応が必要ではないか、というのが利用した上での率直な感想です。
少子高齢化の人員不足を見越して、キャッシュレス化は推進されるべきです。それにより削減される諸費用は1.6兆円とも言われており、数十年後の社会では当たり前の金融サービスとなりうる存在です。だからこそ、年齢制限がないという問題点を解消する規制が導入されることを待ち望みます。
【参考記事】
9月27日付 日経新聞朝刊 9面 後払い決済 米で3.5兆円