認知症 偏見を防ぐために

昨日9月21日は「世界アルツハイマーデー」。認知症の症状を理解し、支援を呼びかける日でした。また、国際アルツハイマー病協会は、9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、様々な取り組みを進めているそうです。21日付の朝日新聞でも、自治体や企業、学校などで実施されている「認知症フレンドリー講座」の様子が紹介されていました。

朝日新聞社が展開する同講座では、認知症の人の視界を再現したバーチャルリアリティ(VR)を用い、「視界がゆらゆらする」「階段が下りづらくなる」「錯視」など、さまざまな症状を場面設定に合わせて疑似体験できます。バス乗車時の設定では、乗車の際に戸惑ったり、乗車賃のための小銭が出せなかったりするなど、記憶障害や判断力低下による影響まで再現されています。

この記事を読んで改めて思ったのは、認知症になったからといって全てのことが出来なくなるわけではないということ、そして、小中学校の頃にこういった体験ができていたら、この病に対する認識は変わっていただろうなということです。認知症といっても症状や進行度は様々です。周囲のサポート次第で改善することもあるでしょう。しかし、私も含め、依然として偏見は強いと感じています。

私の祖母は認知症で、晩年は施設に入っていました。私が小学生5年生の時に亡くなったので、祖母との思い出はあまりありません。その数少ない記憶のほとんどが、病院や施設で寝ている祖母に対し、簡単な会話するくらいのもの。親に連れられ半ば義務的に会いに行っていたこともあり、祖母への思い出はあまり良いものではありません。一人では食事も出来ず、トイレにも行けない祖母。介護を受ける姿には残酷さすら感じました。その時、私は「病気だからしょうがない」と思い、自分と祖母との間に一線を引こうとした記憶があります。

しかし、今になれば祖母への向き合い方が他にあったと思います。認知症だからと諦めて色眼鏡で見るのではなく、症状について正しく理解した上で、その先の暮らしに目を向けるべきでした。私の祖母も、物忘れの症状はありましたが、私の存在を忘れるほど酷くはありませんでした。ならば、当時小学生だった私でも、積極的に話しかけるくらいのことはできたはずです。

認知症について、そして介護の問題についてもっと知る機会が必要です。教科書に載っているような表面上の知識だけではなく、上記の講座のような体験型の学習機会も増やしていくべきでしょう。

今や、日本人口の4人に1人が高齢者です。そんな日本社会で高齢者と共生していくためには、今まで以上に相手の気持ちや苦労を想像し、慮る必要があります。自分や周囲の人が当事者になる前に知識を持ち、皆がこの超高齢化社会と向き合っていかなければなりません。

 

参考記事;

・21日付 朝日新聞デジタル「見て知って、共生の道ひらく 認知症フレンドリー講座」