筆者は明治大学国際日本学部という、比較的留学生が多い学部に在籍しています。まだ1年生だった2019年は全体の2割ほどが外国人留学生でした。学部が設置されている中野キャンパスの1階アトリウムでは、白人の男性と黒人の女性が激しく体を絡ませ濃厚なキスをしている、まるでハリウッド映画のような光景に出くわし、香川県から上京してきたばかりの筆者は、ただただ驚くばかりだったのを覚えています。
時は流れ、20年からのキャンパスライフは大きく変容しました。大学に行っても学生の姿はなく、たまに見かけても日本人ばかりです。留学生との交流を期待して入学した後輩たちの落胆は想像に難くありません。
日本学生支援機構(JASSO)によると、コロナ以前の19年に日本国内の大学に在籍した留学生の数は14万2691人(学部が8万9602人、大学院が5万3089人)でした。一方、昨年は12万6474人(学部が7万3715人、大学院が5万2759人)です。オンラインでの受講者が多かったからなのでしょうか。筆者が感じたよりも留学生の総数は減っていないようです。
今後コロナの収束に伴い、キャンパスで見かける外国人の数は増えていくでしょう。せっかく大学に入ったのだから、留学生とも親しくなりたい、そういった方に向けて、筆者が大学一年生の時に試した取り組みを紹介したいと思います。
さきに述べた通り、筆者が入学した当時のキャンパスには留学生が多くいました。彼らと簡単に仲良くなれると思っていたものの、留学生同士で交流する傾向が強く、こちらからアクションを起こさないと距離は縮められません。かといって、いきなり話しかけるのは精神的なハードルが高いですし、相手も不審者のように思い、警戒してしまうかもしれません。そこで筆者が思いついたのが「ボードゲーム」でした。
ボードゲームであれば、ルールを知っていれば言語が異なってもコミュニケーションを取ることができます。英語が苦手な人でも最低限の単語さえ覚えていたら、異文化交流できる利点があります。また、プレイしているうちに会話がはずみ、次第に親密度が高まります。
実際に筆者は「カタン」や「モノポリー」など国際的に有名なボードゲームで遊ぶサークルを作りました。5月に活動を開始し、InstagramなどSNSで部員を募集したところ、春学期の終わりには40人が集まり、留学生もドイツ人やアメリカ人、中国人、韓国人など10名ほど参加するほどでした。平日は毎日キャンパス6階のラウンジで閉館時間の22時30分までサイコロを振り続けました。始めはみんな初心者で勝ち負けに拘らず和気あいあいと楽しんでいたものの、実力が上がるにつれて、ピリピリとした勝利を追求する雰囲気が出てきます。キャンパスが閉館したあとはファミレスに移動し、日本語や英語で「あの手が悪かった」など感想戦をするのも楽しかったです。
残念ながら、サークル自体は秋学期に筆者が休学したことや、コロナ禍でオンライン授業に移行したことで消滅してしまいましたが、ボードゲームが交流の促進に役立つ手ごたえは得られました。
カタンはドイツ発祥のボードゲームで、道や拠点を作り未開の土地を切り開く開拓ゲーム。世界で約3000万個売れている。本場ドイツからの留学生とプレイした際は、ドイツのローカルルールでプレイした。
中国版将棋と呼ばれている「シャンチー」(2019年6月26日筆者撮影)
日本の将棋とは異なり取った駒を使うことはできない。チェスのようなルール。
コロナ禍では、水際対策の入国制限により、日本に留学したくても入国できない海外大学生の苦悩が度々報じられました。入国の難しさから、「SAKOKU(鎖国)」と表現した海外メディアもあるようです。これだけ待たされたのですから、留学生が日本での学生生活にかける期待は相当に高いでしょう。日本人大学生は、おもてなし精神で彼らを迎え入れなければなりません。
留学生との交流からは、言語だけではなく文化や価値観の差異など多くのことを学ぶことができます。その機会を最大限に活かすべく、シャイにならず積極的に交流しましょう。その際に、彼らと仲良くなるための一つの手段として筆者が活用したボードゲームは非常に有効な手段であると考えます。
少しでも早く、留学生を含めた友人と大声で談笑しながらキャンパスを闊歩する、以前の日常が帰って来ることを願います。
参考記事
朝日新聞デジタル 「海外の学生に「ぬか喜び」の意味を教えた11月 一橋大教授の危機感」
https://digital.asahi.com/articles/ASQ2K7595Q2DUTIL021.html?iref=pc_ss_date_article
参考資料
日本学生支援機構 外国人留学生在籍調査
https://www.studyinjapan.go.jp/ja/statistics/zaiseki/index.html