創業25周年を迎えた楽天グループが苦境に直面しています。株価は1年半前に1200〜1400円前後で推移していたのが、ほぼ半値の600〜700円に。売上高は右肩上がりを続ける一方、利益はイマイチ伸びず。目下、3期連続で赤字に陥っています。日本を代表する超有名大企業でありながら、時価総額は1.1兆円。国内企業のトップ100圏外です。
昨朝の日経新聞は、悩めるマンモス企業の現状を分析しています。苦境の主要因はモバイル事業です。今年上半期には、同事業の営業損失が2593億円を記録。創業以来続けるネット通販「楽天市場」や近年成長著しいフィンテック「楽天証券」「楽天銀行」など、その他で積み上げた827億円の利益を吹き飛ばす大赤字となりました。ドコモ、ソフトバンク、KDDIに寡占されていた市場に風穴を開け、携帯通信料金の低下に貢献したことは消費者として喜ばしい出来事でしたが、楽天自身は大やけどを負っています。
7月から料金プランを改訂し「1GB以下0円」を終了。乞食ユーザーをふるい落とすことで、黒字化を目指します。とはいえ、今後いくら頑張っても市場で圧倒的なNo.1の座に就くことは難しく、競合他社との価格競争を永久に続けなければなりません。銀行と証券の親子上場によってグループ全体の資金調達を増やせたところで、根本的な問題の解決には至らないので、今後もマネタイズに苦労するでしょう。
新聞ではモバイル事業のみ取り上げられていましたが、楽天グループは他にも改善すべき課題を抱えています。まず、手掛けるサービスの種類が多すぎる。色々頑張ってはいるものの、殆どが市場首位になれず、良くも悪くも中途半端。コングロマリット・ディスカウントが生じています。「成功は99%の失敗に支えられた1%」(本田宗一郎)と言うので、様々な新事業に挑戦することは必ずしも悪いことではありませんが。
楽天経済圏のシナジーを損なわないよう留意しながらも、採算性の低い部門を売却するか廃止し、中核事業と成長性の高い事業に経営資源を集中させるべきだと思います。最重要はネット通販事業です。楽天はアプリやサイト画面の情報量がいつも多すぎます。UIさえ改善すれば、アマゾンと互角以上の戦いが出来るはずです。組織体系の再編も同時に検討すべきでしょう。現在の区分は少し複雑で、非効率が生じている可能性が否めません。
ブランドイメージも大きな課題です。決してイメージが悪い訳ではないものの、知名度のわりに普通。アップルやソニー、任天堂と比べると劣る印象を覚えます。楽天のサービスは、アップルの新商品に対して消費者が抱くようなワクワク感に欠け、熱狂的な信者も少ない。プロ野球やJリーグのチームを所有し、FCバルセロナのスポンサーにもなっていますが、より一層CSRやエンタメ、ゲームに注力して日本国民の心を掴むべきです。
ブランド力の向上には宣伝広告も重要です。CMをしつこい、うるさいと思われないよう改めた方が良いと思います。会社の知名度は既に高いので、「楽天カードマン」や「楽天モバイル」を連呼する必要なし。視聴者の深層心理をくすぐるようなストーリー。例えば、質素な暮らしを送る家族生活の節目のイベントには、いつも必ず楽天のサービスが使われていた。離れ離れで暮らす彼氏彼女が楽天市場で互いにプレゼントを買って送り、愛を確認することが出来た、みたいな人間的な暖かさ。あるいは、BGMにクラシック音楽を使うなどして、高級感を前面に押し出す方が良いと思います。
モバイル事業の収益化を急ぐこと。事業の選択と集中。組織再編。サービスのUI改善。ブランド力の向上。これらを実現できれば、GAFAMに並ぶような高成長、高収益、高株価の企業に大化けできると思います。そもそも会社のポテンシャル自体は非常に高い。社員の多様性はおそらく日本一。ベンチャーのような活発な社風と退社した社員の出戻りを許す寛容さも、他の日系大企業にない強みです。苦境を乗り越え、投資家の評価を覆すような大躍進を期待しています。
参考資料:
22日付 日経新聞朝刊(東京13版)2面「胸突き八丁 楽天1:携帯民主化 波高し」