低用量ピルをもっと手軽に

低用量ピルに対し、「遊んでいる女性が飲むものだ」「体に悪い」といった否定的なイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。しかし日本以外の先進諸国では、若い女性が自分の身を守るために服用するのは当たり前のことです。国連が発表した「避妊法選択2019」によると、フランスでは15~49歳の女性におけるピルの普及率が33.1%、イギリスでは26.1%なのに対し、日本ではわずか2.9%です。

日本で普及が遅れている原因は、偏見が広がる一方でピルに対する正しい知識が共有されていないところにあると思います。効用は避妊だけではありません。生理痛や月経困難症など毎月女性を悩ませるトラブル全般に有効です。筆者は動けなくなるほどの生理痛とひどい眠気に悩まされ、高校3年生の時に飲み始めました。服用を始めてからは、生理に関わるほとんどの症状が軽減されています。

また、いま体に起こっている不調だけでなく、将来的に起こりうる不妊や子宮の病気を防ぐ効果もあります。昔に比べ一生で経験する生理の数が数倍に増えており、それに伴って婦人科系の病気を患うリスクも高まっています。現代の女性は一生に約450回生理を経験すると言われていますが、これは体にとって自然なことではないということです。

ピルは生理の増加によって起こりうる病気のリスクを低減させることができます。いまだに副作用が大きいというイメージがありますが、むしろ不妊や命に関わる病気を防ぐことができるということです。不妊の原因となる子宮内膜症は国内に数百万人の患者がいると言われており、ピルを服用することによって予防・治療することができます。

1か月に1回のペースで訪れる心身の不調は、社会進出を阻む要因にもなっています。経済産業省の調査によると、72%の女性が生理関連の症状や疾病により仕事に支障をきたしているということです。生理痛の放置によって不妊となり、不妊治療のために仕事をやめる選択に迫られる女性も少なくありません。これらの問題を解決することができるピルの普及は、職場における男女平等を推進するために必要なことだと思います。

日本では、諸外国に比べ販売価格が高くなっています。病院の診察費を含めると1か月あたり3000円程度かかってしまいます。いくら服用のメリットが大きくても、経済的負担が大きければ手が届かない人も多いでしょう。海外では保険適用で無料になったり、企業が若く有能な女性を登用するため社員にピルを支給したりするケースが多くあります。日本でもそのような取り組みが広がれば、生理の苦しみから解放され、もっと多くの女性が社会で活躍できるようになるのではないかと思います。

 

参考

8月15日付 日経電子版「ピル、46%が会社補助求める」

 

日経xwoman(クロスウーマン) 「現代女性は昔の女性の約10倍、生理の回数が多い!?」

日経xwoman(クロスウーマン)「女性のための働き方改革!生理快適プロジェクト」

NHK 生活情報ブログ「避妊薬のピル“不妊の予防”にも効果」

経済産業省『働く女性の健康推進に関する実態調査 2018』