小学生も楽しい「感じる数学」展

今日付の読売新聞に、数学をテーマとした展覧会を紹介する記事がありました。筆者の在籍する北海道大学の総合博物館で催されているものです。タイトルは「感じる数学 ― ガリレイからポアンカレまで」。ガリレイ(1564-1642)からポアンカレ(1854-1912)までの数学の歴史を、説明パネルや機器などを駆使して遡ります。

先日の豪雨とは打って変わって気持ちの良い天気だったので、博物館に足を運んでみました。

この展示は、北海道大学総合博物館と「数学見える化プロジェクト」が主催したもので、高校や大学の教員と北大数学科の学生など大勢の人が携わっています。時間という概念を幾何学に初めて取り入れたガリレイの「振り子」に始まり、アインシュタインを経由し、オイラーの「不変量」に終わる。なんとも壮大な展示です。数学と物理を最も苦手とする筆者にとって、残念ながら内容を完全に理解することはできませんでした。それでも、高校で習った公式や定理が、どのように数学者が追い続ける難問に繋がっているのかを知り、感慨深く感じました。

例えば、コイン投げで表裏が出る確率を求める問題。表と裏が出る確率はそれぞれ1/2ですが、そもそもなぜ表が出るか裏が出るか分からないのでしょう。コインは重力に従って落ちてくるのですから、その運動はニュートン力学で計算できるはずです。すると、投げられたコインの表裏は正確に予測できるはずであり、確率という概念はいらないことになります。

この謎は、ラプラスが提唱した「ある瞬間のすべての事柄の動きを制御する力及びそれらの間の関係を完全に知る知性」に発展していきます。この知性を獲得すれば、宇宙のすべての出来事を正確に予測できるそうです。もちろん投げられたコインの面裏も正確に当てられる理屈です。高校数学が宇宙の謎に繋がっていくのを実感し、数学のロマンを垣間見た気がしました。

さて、少し難しい数学の話をしてしまいましたが、意外にも、会場は家族連れが多くを占めていました。実際にピンポン玉を転がせるサイクロイドやボルトンボード(パチンコ台)。縦横2メートルはあると思われる巨大な振り子の模型。迫力のある展示がたくさんあり、しかもその多くは自由に触れることができます。体験型が多く、小さい子どもには楽しい空間になっていました。興奮からか、解説係の学生に質問する小学生も続出。「なんで〜なの?」と本質を突く質問もあり、学生を多少困らせていたようです。とはいえ、質問された彼らも楽しそうで、数学に対する純粋な興味が溢れる空間でした。

同展の開催は、来月25日まで。札幌に来る機会があれば、ぜひ覗いてみてはいかがでしょう。

 

 

参考記事

17日付 読売新聞朝刊(北海道14版)25面(地域 道央12版)「体で感じる 数学の発展」

参考資料

「感じる数学― ガリレイからポアンカレまで」会場配布パンフレット 北海道大学総合博物館、数学見える化プロジェクト主催

「ゴルトンボードをデザインする」同上