「はじめて」に直面してばかりの大学生が思うこと

政府は今年6月、企業がインターンシップで得た学生に関する情報を採用活動に使うことを認める方針を決定しました。学生が一定期間実際の業務を体験するインターンシップのルールについて、経団連と大学側でつくる産学協議会が見直しを求め、それを政府が容認したのです。現在の大学2年生にとっては目が離せない動きです。来夏以降にインターンシップに参加すると、その情報や評価が採用に直結するようになるのですから。

インターンシップが採用に直結するようになることで、就職活動の長期化や早期化はますます加速していくでしょう。今でもインターンシップに参加するには、書類選考や面接選考を通過しなければなりません。それが採用に直結するとなれば、学生は綿密な準備を迫られることでしょう。

このような就職活動の変化は学生にどのような影響を及ぼすのでしょうか。大学3年になると、研究室やゼミに属し、より主体的な学び、豊かな学びが求められます。そのなかで、自分自身を内省し、どのように生きるのか、どのようなことをしたいのかと卒業後のキャリアについて深く考える機会が生まれるはずです。しかし、就職活動が長期におよび、開始時期も前倒しすれば、そんな悠長なことは言ってられません。なかには、自らの進路、実社会でやりたいことについてしっかりと考えることもなく、周囲に躍らされて就職活動を始めてしまう学生もいるでしょう。

私は現在、大学2年生。採用直結型インターンシップが正式に認められたなかで、就職活動にはじめて直面する世代です。高校3年の時には、はじめての大学入学共通テストを受けました。記述問題を導入するのかしないのか、英語外部試験は利用するのかしないのか。二転三転して、高校の先生も私たち受験生もうんざりさせられました。

一大学生として思うのは、採用直結型インターンシップを認める決定プロセスのなかで、教育現場に立つ教員そして当事者である学生の声がどれほど反映されているのかということです。自分の人生のハンドルは自分自身で握るべきだと考える私にとって、いつの間にか知らないところで自分の学生生活あるいは人生にも関わるような決定がなされたことには大きなショックを受けました。

「学生の分際でえらそうに」と思いますか。しかし、一人の人間として自身に関わることは自分で意思決定するということは、どんな人にも認められる基本的な権利のはずです。たとえ声に出さなくても、もっと学生の意見を聞いてほしい、尊重してほしいと考える大学生はたくさんいるのではないのでしょうか。

 

参考記事:

7月27日付 日本経済新聞夕刊 12面(くらしナビ)

インターン学生の情報、採用活動での使用を政府容認…2024年度卒の大学生ら対象 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)