アイドルやアニメのキャラクターなどを熱狂的に応援する「推し」という言葉、数年前から耳にしてきました。そんな「推し」を応援する活動「推し活」が、最近になって広がりを見せています。
推し活は、消費・表現・生きがい
23日日経新聞朝刊の読書欄には、推し活の実態が説明がされています。
大好きな人やキャラクターの作品やグッズをいくつもいくつも買う。舞台やライブに足を運ぶ。踊る。声援を送る。なけなしのお金と時間を費やす消費であり、表現であり、生きがいとなる。推しを応援する行為「推し活」は性別、世代を超えて広がり、21年の新語・流行語大賞にもノミネートされた。
「なけなしのお金」という言葉から、推し活へかける熱量の多さを思い知らされます。
周囲の推し活を聞いてみた
先日、愛知県で暮らす友人(社会人1年目・女性)が、筆者の住む埼玉県まで訪ねてきました。聞けば、推しのアイドルがスーパーアリーナでライブを開催するとのこと。彼女は6つの男性アイドルグループのファンクラブに入っています。月に一度の頻度でライブのために遠征しているのだとか。推しは「仕事のモチベーション」と語る彼女、「明日からの仕事もこれで頑張れる」。と意気揚々と帰っていきました。
バイトの仲間と飲んでいた時も推しの話題に。某女性アイドルグループの追っかけをしている後輩(大学3年・男性)は、何度もライブやイベントに足を運んだことでアイドルたちに自身が認知されたと喜んでいました。「アクリルスタンドを持って旅行先で記念撮影をする」。と教えてくれた同級生(大学4年・女性)も、某男性アイドルグループを推しています。アクリルスタンド(通称アクスタ)は、アクリル素材で作られたグッズで、推しの写真やイラストが印刷されています。最近は、このアクスタを持ち歩き、お気に入りのスポットで撮影することがトレンドになっています。
推しの対象はアイドルだけに留まりません。推し活を「生活の楽しみであり糧」と話すサークルの先輩(大学院1年・女性)は、ドラマで活躍する女優さん数名を推しています。普段は推しが掲載されている雑誌をチェックし、ファイリングしていると言います。インスタントカメラで撮った画像に推しのサインが入った特典やイベントの参加権などが当たる懸賞にも応募。推しの愛用品と同一の商品を探し、手に入れることもあるのだそうです。
広がる推し活マーケット
インスタグラムでは、主に女性の間で「推し」関連のワードが飛び交っています。「#推しのいる生活」「#推し事」「#推しとカフェ巡り」などなど…
投稿写真を見ると、アクスタの他に、推しの写真が入った手作りのフォトフレームやうちわなどのグッズが。「#推しの誕生日」と称して、当事者不在の誕生日会を開く様子も目にします。
今、これらを取り巻く市場は盛り上がりを見せています。サンリオや100円ショップ各社では、コレクションしたグッズを収納したり飾ったりするための商品を販売しています。
推しはみんなのもの!?
珍しいですが、筆者は推しと呼べる対象者がいません。そのことを上記で挙げた友人たちに話すと、「一緒に推さない?」と口を揃えます。
ぼくのわたしの独り占めにはせず、みんなに「推す」のであって、共感を呼びかけ共有を誘う。
先述した日経新聞を読み進めると、こんな記述がありました。
「推し=尊い」存在であり、恋愛感情も独占欲も、そこにはないのかもしれません。また朝日新聞デジタルでも、「あがめたい」「見守りたい」といった感情に近いと記されていました。
新たな崇拝の形
昭和の時代にも、アイドルを応援するばかりか、身辺警護も買って出る「親衛隊」や、「オタク」と呼ばれる人々がいました。今も昔も何かを応援する気持ちは変わらないでしょう。ただ、SNSを通して繋がり、更なる情報を共有し合う「推し活」は、新たな崇拝の形と言えます。
奥が深い推し活の世界、夢中になれる対象がいるだけで生活を豊かにしてくれる気がしました。
参考記事:
23日付 日経新聞朝刊 埼玉 33面『「推し活」が開く消費モデル』