情報社会で生きるということ

私たちは日々、情報の波に飲み込まれながら生活しています。何かを調べようと思ったら、まずインターネットを利用するでしょう。そんなとき、私たちは流れてくるたくさんの情報の中から必要なものを自由に選択することができているのでしょうか。

中国では、国内からグーグルやツイッターなど欧米のサービスにアクセスできません。中国当局が国内への接続をチェックし、遮断しているためです。また、ロシアでは政府による遮断だけではなく、欧米の大手IT企業や通信事業者がロシアをインターネットから切り離す動きが相次いでいます。世界をつなげるはずのインターネットに分断が生じているのです。このような状況下で正確な情報を得ることは困難です。とくに意識せず流れてくる情報に触れている人は、自分が偏った情報しか得られていなかったことにも気づくことができません。これは、中国やロシアに限ったことではありません。インターネットを利用するすべての人が考えなければならない問題です。

私が使っているソーシャルメディアの一つにInstagramがあります。Instagramの検索画面のトップは、私の利用履歴に基づいたおすすめの投稿でいっぱいになっています。その中にたまたまあったコロナ陰謀論の投稿を興味本位で開いてしまいました。すると、その後似たような投稿が多く表示されるようになったのです。結局、「虚偽の情報」として報告して終わりました。このとき、ある価値観、考え方に一度はまってしまえば、自分の意思にかかわらず自動的に似たような投稿ばかり表示され、他の考えに触れることができずに、その枠から抜け出せなくなってしまうのだと恐怖を感じました。

このようなことを防ぐためにまず大切なのは、ネットメディアの特性を知ることです。例えば、私たちの利用状況が分析され、インターネットでは自分好みの情報が優先的に表示されることを知っていれば、ただその利便性に浸かるのではなく、その危険性を意識することができます。知らず知らずのうちに自分の価値観や考え方に合わない情報から隔てられ、自分の思考の枠の中に閉じこもる危険性があると意識することで、初めて偏りなく情報を得るにはどうするべきか考えることができるのではないのでしょうか。

多くの人はインターネットの知識が豊富なわけではなく、政治にもさほど関心はない。流れてくる情報しか見ていないのが現状だ。ネット上で自分から積極的に正確な情報を探しにいかなければ、何が起きているのかを知るのは難しい

私たちに求められるのは、なんとなくネットニュースを読んだり、ソーシャルメディアを楽しんだりするという受け身の姿勢ではありません。正確な情報、偏向のない情報を得るためには、自らが積極的に自発的に行動する必要があります。自分の思考の枠に囚われるというのは、とても恐ろしいことです。しかもそれが無意識のうちなら、なおのことです。他者の価値観や考え方に触れる機会がなければ、他者を理解しよう、受け入れようとする土壌が育たないからです。それどころか、自分を絶対的なものと考え、自分と少しでも異なる相手を拒絶してしまうかもしれません。そのようなことを避けるためにも、今一度、自身の情報を得る手段、ネットメディアの使い方を見直してみてはいかがでしょうか。

参考記事:

17日付 朝日新聞 The Asahi Shimbun GLOBE

参考資料:

総務省|令和元年版 情報通信白書|インターネット上での情報流通の特徴と言われているもの (soumu.go.jp)