私たちの政治参加を考える

先日、参議院選挙がありました。投票に行った人もそうではない人もいると思います。NHKの調査によると、今回の選挙の投票率は52.05パーセントでした。前回から3.25ポイント上がったものの、過去4番目の低さだったといいます。

近年、国政選挙のたびに投票率の低さが話題になります。とくに、若者の投票率と政治的関心の低さを指摘し、警鐘を鳴らすものが多い気がします。こうした報道に接していると、投票が唯一の政治参加の方法であるように思いがちです。しかし、私たちの声を届ける方法は、ほかにもあります。

断っておきたいのですが、民主主義の観点において、国民1人ひとりが選挙で投票することは非常に重要なことです。筆者は、投票は大切であると考えています。しかし、選挙の時に投票所に足を運ぶことだけが、政治に参加することではありません。むしろ、日常的にニュースに触れて情報を集めること、各政党の政策を知ること、必要だと感じれば署名活動や抗議活動に参加すること、そうした日常的な政治への関心こそが広い意味で民主主義を支える力であると思います。

選挙以外の政治参加の代表的な例として、署名活動があります。選挙と違って新聞などで取り上げられることは少ないですが、多くの団体が署名活動を行っています。

例えば、国際環境NGOのグリーンピース。彼らのウェブサイトに行ってみると、様々な環境問題関連の署名活動が進められていることがわかります。

スターバックス、タリーズ、プロントの大手コーヒーチェーン3社に、使い捨てコーヒーカップの使用削減を求めるもの。原発への依存をやめ、再生可能エネルギー100パーセントとする気候変動対策を政府に求めるもの。他にも、様々な分野に特化した署名サイトがありました。

グリーンピースのウェブサイト。ウェブ上で署名することができる。

別の方法として、クラウド・ファンディングがあります。

今年4月、渋谷に日本で初めて設置された「Climate Clock」。気候変動の変化が後戻りできなくなってしまうポイントへの残り時間を示した、カウントダウン式の時計です。この時計の設置を計画したのは行政ではありません。有志の大学生、たった数人でした。しかし、彼らの気候変動対策を訴える活動が共感を呼び、クラウドファンディングでの寄付総額は目標の1000万円を突破。渋谷区からも「後援プロジェクト」として正式に認定されました。数人の大学生の活動が、行政を動かしたのです。

https://readyfor.jp/projects/Climate-Clock Shibuya/announcements/211915(筆者閲覧:2022年7月14日)

ここでは紹介しきれませんが、SNSでの発信、企業理念による商品選択、平和的なデモへの参加など、政治的意見を届ける方法は他にもたくさんあります。

選挙で投票するのは大切なことです。しかし、それだけで満足していないでしょうか。自分の票で社会が変わるわけがないと思っている人こそ、別の政治参加の方法を探してみてほしいと思います。

ある政治学者の研究によると、たった3.5パーセントの人々が非暴力的な方法で本気で立ち上がると、社会が大きく変わるといいます。政治家を介さない草の根の運動は、最初こそ小さなさざ波でも、いつか社会の大きなうねりになるはずです。

 

 

11日付 読売新聞朝刊 (北海道17版)1面「与党大勝 改選過半数」

「参議院選挙 2022 投票率ランキング 全国最下位の街では…」『NHK NEWS WEB』2022年7月12日  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220712/k10013713101000.html

グリーンピース・ジャパン https://www.greenpeace.org/japan/ (閲覧日:2022年7月14日)

「気候変動アクションを当たり前に!渋谷に気候時計を置きたい!」ReadyFor https://readyfor.jp/projects/Climate-Clock-Shibuya (閲覧日:2022年7月14日)

Robson, D. (2019, May 14). The ‘3.5% rule’: How a small minority can change the world. BBC. Retrieved from https://www.bbc.com/future/article/20190513-it-only-takes-35-of-people-to-change-the-world