「話す・書く」力育む新方針

 

高校3年生の頃、「受験英語」に嫌気がさした覚えがあります。筆者は高校2年生の時にアメリカへ留学していました。現地では「英語で話す力」がいかに大切か、身を持って感じました。それが帰国して受験勉強に追われると、「紙とペン」と向き合う授業の連続。大好きなはずの英語の授業が、とても苦痛になりました。もしかしたら、筆者と同じような体験をした方もいるかもしれません。特に、読む力を高めたり文法の知識を増やしたりするのに必死になったという方も多いと思います。その英語教育が大きく変わるかもしれません。

文部科学省は、高校や中学の英語教員の語学力を高めるため、全国約400の大学で基礎的な授業内容を共通化する方針です。「話す」「書く」力の強化を目指し、英語で討論するディベートの授業や、自分の考えを英語で表現する授業を大幅に増やします。早ければ2018年度から始まります。

なぜ、このような新方針が定められたのでしょうか。現在の授業内容では「中学生や高校生の指導に必要な正しい発音、話す力、書く力を養成するには十分とはいえない」(文科省担当者)のが実情だからです。中学・高校の英語科の教員免許を取得できる大学は約400校あります。教育学部の英語学科だけでなく他学部の英文科など、学部や学科は多岐にわたり、授業内容は各大学に委ねられています。同省は英語科の教員免許を取得できる学部・学科で共通して学ぶ基礎的な授業内容を定め、「未来の英語教員の語学力向上」を目指しています。

同省によると、全国の公立中学・高校の英語教員で英検準1級以上に相当する資格を持つのは、中学で28.8%、高校で55.4%でした。(2014年度調査)これは、17年度までに中学50%、高校75%にするという目標からかけ離れています。政府が昨年11月に開いた外部有識者らによる「行政事業レビュー」でも英語教育が批判の対象になりました。「子どもの学力向上に成果が出ないのは、教員の英語力や指導力が足りないため」との厳しい指摘もあったそうです。

子どもの学力向上の成果を英語教員の英語力のせいにする意見には、少し疑問も抱きます。とはいえ、未来の子どもたちの「話す・書く」力が伸びるのであれば、今回の新方針は大いに歓迎されるべきでしょう。言語は話せなければ意味がありません。相手とコミュニケーションがとれる瞬間にこそ、他言語を学ぶ楽しさが生まれるのですから。

参考記事:

6日付 日本経済新聞朝刊(大阪13版)38面(社会)『英語教員「話す・書く」強化 400大学で共通授業』