昨日、法制審議会の第195回会議が開催されました。議題は2つ。「情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備(諮問第122号)」と「犯罪収益等の没収(諮問第123号)」です。議事録はまだ公開されていませんが、前者の問題は反対意見も一定数上がった模様。新聞記事には「公判非対面 課題多く」とネガティブな小見出しが載っていて、残念な気持ちになりました。
そもそも「情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備」とは、逮捕・捜索令状や証拠書類の電子化、そして公判のオンライン化を指します。現在、逮捕状は警察官などが裁判所に足を運んで請求し、裁判官が記名、押印して紙の令状を発行します。地方では、警察署から最寄りの簡易裁判所まで片道1時間。裁判官不在の休日は、遠くの裁判所へ片道3時間。さらに大雪が降れば、その1.5倍かかることも。電話とメールなら5分で済むのに時間の無駄です。
証拠書類については、これまで紙媒体でしか発行されず膨大な費用がかかっていました。弁護側は検察官などから開示を受けますが、コピー代が書類1枚あたり数十円。重大事件で書類が多数ある場合には数百万円に膨らむそうです。手間とお金の無駄使いとしか言いようがない。業務の効率化や負担軽減のため、これらの電子化は歓迎すべきでしょう。
さらに、捜査・公判手続きは原則、対面形式で行うものと定められていました。重大案件ならまだしも、ほぼ全ての案件で毎回必ず出廷させるのは時代遅れだと感じます。ビジネス界では、コロナ禍を契機にオンライン面談が定着しました。私の就職活動でも、大半はオンライン形式でしたが不便は感じず。むしろマスクを着用せずに済み顔が大きく映るので、表情が分かりやすいという利点がありました。
オンライン化は必然の流れであるにも関わらず、慎重論が相次いだ審議会。「対面しないと被告人が嘘をつく心理的な抵抗が減る」「裁判官の事実認定を誤らせる危険が大きい」このような意見を主張する専門家に私は言いたいです「なんかそういうデータあるんですか?」対面であろうとなかろうと、嘘をつく意思を持った被告人は嘘をつきます。そして、証人尋問や被告人質問がオンライン形式に変わった程度で事実認定を誤るような裁判官はそもそもの資質や能力が低い。そのような裁判官に審理を任せる方がよほど危険です。
セキュリティー面の課題も指摘されました。外部アクセスを遮断し、裁判所、検察、弁護士のみがアクセスできる独自のシステム開発が検討されるとのことですが、有効策と言えるのでしょうか。どうせ使い勝手が悪くて使いこなせない、あるいはシステムを外注するのに莫大な費用がかかるというオチが見当つきます。Eメールやグーグルフォーム、チャットワーク、スラック、ズームなど既存のシステムを、厳格な利用ルールのもと活用する方が良いかと思います。
ともかく課題やリスクを列挙するのは程々にして、早急かつ前向きに行政・司法手続きの効率化を進めて欲しいものです。宜しくお願い致します。
参考資料:
28日付 日経新聞朝刊(京都12版)43面「令状・証拠 脱「紙」へ転換」