今、改めて振り返る東京五輪

3日より全国の映画館で「東京2020オリンピック SIDE:A」が上映されています。大会が終わるごとに制作される記録映画で、1930年から国際オリンピック委員会が映画製作を義務付けています。1964年の東京オリンピックでは、市川崑が総監督の作品が作られ、翌年に公開されました。過去の記録映画は、オリンピックのwebサイトやオリンピック公式YouTubeチャンネルで視聴することができます。

2021年に開催された東京オリンピック。公式映画の監督は岐阜県出身の河瀬直美さんが務めています。今年4月からの18歳成人に向けた朝日新聞の記事(1月4日付)では、インタビューの最後に「皆さん一人一人が唯一無二の存在。何物でもないあなたという存在を、とにかく一番愛してあげて下さい」と語りかけています。この言葉のように、「東京2020オリンピック」では選手一人一人を映した作品のように感じました。

 

しかし、SNS上では映画に対して批判的な投稿が多くみられます。筆者が観に行った際も観客は5人。「映画も無観客」と皮肉るツイートもありました。コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、多くの批判がありながら無観客で開催された東京オリンピック。この大会は人々に勇気や感動を与える一方、政治問題として強行された印象が社会に根付いているのではと感じます。

映画には大会期間中の社会の様子も描かれていました。救命措置を受けるコロナウイルス患者、開会式が行われている国立競技場の外で繰り広げられる五輪中止を求めるデモ。五輪を礼賛するような映画ではなく、2021年がどういう年だったのか改めて考えさせられました。

子育てをしながらアスリートとして活躍する選手のインタビューや大会の延期が決定して引退を決意した元女子バスケットボール日本代表の大崎佑圭さんを取り上げたシーン。ハーバード大に通いながら出場を果たした女子陸上選手など、それぞれがどのような境遇や思いのもとで大会に参加していたのか映画を通して知ることができました。

 

私たち大学生も、様々な形でオリンピックを迎えました。自身の得意な分野でボランティアとして参加した学生もいれば、会場近くまで行って雰囲気を楽しんだ人。テレビ中継を食い入るように見た人、何もしなかった人もいます。話を聞く限り様々です。

24日からは、市民に焦点を当てた「東京2020オリンピック SIDE:B」が公開されます。多くの税金が投入されて開催された東京オリンピック。会場の中と外で何が起きていたのかを考えるために、後編も観に行ってみようと思います。

 

参考記事:

17日付 朝日新聞夕刊 4面「河瀬監督×五輪、答えは…」

4日 読売新聞オンライン

「五輪公式記録映画、選手中心の『SIDE:A』公開…『泥臭い部分をリアルに』」