新聞を読めないひとへ

就活のために新聞を読み始めるひと、多そう。

時事問題に触れるために、就活の傾向と対策を練るために。え、でもそれって、結局は新聞の情報を信用してるってことじゃん、それなら毎日読めばいいのに……とつっこみたくなる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、新聞を毎日読むことって、習慣にならなければむずかしい。わたしの周りの大学生も「新聞を読むのはハードルが高い」と感じているひとが多そうです。

「新聞は『サブスク』である」。それは、新聞をまったく読まないという友だちの、意外にうなずける一言でした。

彼が実際に登録しているサブスクリプションは Apple Music(月額480円)と Amazon Prime(月額250円)。ところが新聞の電子版は、月額約2000円以上。ふむ、たしかに値段だけで比べてみれば、大学生が自力で購読するとなると敷居は高い。

「新聞を毎日読む」と答えてくれた3人は、全員が実家に住み、中日新聞を購読していました。一人暮らしのひとや、実家が新聞を購読していないひとは、そもそもきっかけづくりに苦労しそうです。

※値段はすべて学割で計算しています

新聞ってどんなメディア?

少し話は変わりますが、最近映画やドラマの「倍速視聴」が話題です。

わたし自身も、動画投稿サイト「ユーチューブ」を見る時はたいてい1.5倍速。オンデマンドで配信された授業の動画も、大体早送りです。教授には内緒ですが。

そんな倍速視聴について、26日付の読売新聞で掲げられていたキーワードは「タイムパフォーマンス(時間対効果)」。できるだけ短い時間で、得られるものが大きいほどいい。そんな意識が若者世代にみられるのだとか。

その記事を読んだ時に、思ったのです。あれ、新聞って、「タイパが低い」とみなされがちなメディアなのではないか?と。

読むのではなく、眺めてみる。

新聞は、エイヤって気合を入れて読まなくちゃいけないメディア。みんなまじめに考えすぎて、毎日読む以前に「始める」ことができないでいるんじゃないか。そんな仮説を立てました。

内容が一目で分かる秀逸な見出し、重要なことから順番に書いてある文章、きちんと説明が付いている写真。新聞って、なんて親切で、信頼のできるメディア! そんな、新聞の「シンプルなすごさ」は、わたしにだって分かります。

裏を返せば、学生はみんな「新聞を読めばためになる」ことをなんとなくでも知っているのに、なかなか手を出せない理由があるのではないか。気合というか心構えというか、気の持ちようで解決が図れるのではないか。本当は、もっと楽に読んでも許される、動画を倍速で見るぐらいの軽やかなテンションで臨めるなら、もっと読みやすくなるのではないか……そんなふうに考えました。

そうか、ならばわたしが、まずは気楽に。新聞を読むのではなく、眺めてみよう!

というわけで、前置きが長くなりましたが、実践してみました。

① 漢字

わたしは大学で哲学を専攻していますが、新聞は哲学書みたいです。というのは、無理にややこしい言い方を選んでいるんじゃないかしら、という気がすることがよくあるからです。

でも、新聞って、実は読めないことばはそんなにないのです。

よくよく読んでみれば、それこそ文節を区切るレベルで、一単語ずつ見れば、たとえば常用漢字以外はルビが振ってあることに気が付きます。「嬉しい(うれしい)」も「眩しい(まぶしい)」も、新聞では親切なひらがな表示なのです。

新聞で選ばれる漢字は、中学生にも読めるもの。わたしたちに読めない漢字は、専門用語以外はほとんどないはずです。

ちなみにわたしは、中日新聞なら縦書きの記事では漢数字なのが、日経・朝日・読売が洋数字で書いてあるのが、とてつもなくモヤモヤするので、今度理由を調べようと思います。

② フォント(字体)

朝日新聞のフォント(字体)が、とっても気になる。本文は、わたしの好きな凸版文久明朝にどこか似たお上品な字体。そうかと思えば、日付のフォントは丸っこくて可愛い。朝日新聞のフォントは「朝日書体」といい、自社でデザインしたオリジナル。「大人の香りを漂わせるエレガントで信頼感あふれるデザイン」だそうです。素敵。

新聞各紙でフォントも全然違います。新聞の情報をより伝えやすくするためといいます。見出しやレイアウトにこだわるだけでなく、デザインにも。本当に細かいところまで、長年積み重ねられてきたノウハウが散りばめられているのだと感心しました。

行動こそすべて

考えることも、言葉にすることもたいせつだけれど、何かを変えることができるのは、自ら行動することだけ。だからこそ、まずは好きに、自由な角度で眺めることからでも始めたい。入念な準備は必要ないし、オトナだけに開かれたメディアでは決してないから。

「新聞を毎日読めば、お前の人生の宝物になるよ」というのが、わたしが敬愛する父の言葉です。

ひとがひとを追う、わたしにはまだ見えないこだわりがギュッと詰まっている、何年も何年も熱意を持った人たちが受け継いできたメディアに、こんなにも簡単に触れられるのです。わたしはうれしくて、たまに胸が熱くなります。

参考記事:

26日付 読売新聞朝刊(12版)15面「広がる『倍速視聴』 メリットと不安」

参考資料:

イワタ 製品情報 朝日書体