ハンバーガー4000円・・・円安で起こる危機とは

筆者がスイス・チューリヒを訪れた時のことです。「スイスは物価が高い」と旅行に行く前に友人に警告されたので、念のためカップラーメン3食分を非常食として持っていきました。ただ昼ごはんだけは特に決めていなかったため、その辺のカフェに入って軽く食べることに。しかし、店内のメニューを見て驚愕しました。

 

『ハンバーガーセット1個4000円』

店名が「カフェ」であるだけの芸能人御用達の高級ハンバーガー専門店に来てしまったのか。そう思うほどの高額です。でも、そこは明らかにどこにでもある平凡なお店。

仕方ないので、前菜だけで済まそうとするも千切り野菜のサラダが1200円。スープも1200円。日本だったらワンコインで前菜、主菜、主食を楽しめるはずなのに。筆者の大好きな「はなまるうどん」のかけうどんなら、220円でお腹いっぱいになれます。千切り野菜のサラダがかけうどんの6個分…。なぜこんなに高いのかと恐ろしくなりました。

29.0スイスフラン(日本円で約4000円)のハンバーガー

帰国してから祖母にこの話をすると「私たちの頃は逆だったのよ。日本で買うより外国で買う方が安かったんだから」と言われました。

バブル景気で経済が潤っていた頃は、日本人が海外に行って買えないものなどなかったそうです。日本では手が届かないブランド品を、わざわざ海外に行って買うこともあったそう。日本の高い賃金を求めて、出稼ぎに来る外国人労働者も少なくありませんでした。しかし、今ではそれが逆転しています。特にスイスは、世界一の高所得国と言われています。スイスで働く友人は、一年間物価の高い国内で貯めて、次の一年は安い国外で使い果たすという生活をしているそうです。比較的物価水準の低いフランスやドイツなどの周辺国に住みながらスイスで働き、高給をもらう人たちも多くいます。

フランスやドイツでさえ、30年前と比べて給料が上がっているにもかかわらず、日本だけはずっと横ばいのままです。「悪い円安」「安いニッポン」と称されるのは、物価だけでなく給料も長らく上がっていないからでしょう。

このことで懸念されるのが外国人労働者の減少です。ただでさえ少子化によって国内の労働者だけでは国の経済は立ち行かなくなっているにもかかわらず、このままでは日本で働くことの魅力がなくなり、外国人が働きにこなくなるかもしれません。

あれだけ安いと言われてきた東南アジアですら、今や日本と同じくらいにまでなってきています。以前アルバイトしていた先の店長はインドネシアから出稼ぎに来ており、「祖国が恋しい」と度々口にしていました。しかし今や家族と別れ、自国を離れてまで、わざわざ日本にくる理由はなくなっているのかもしれません。

今日の日経電子版には、そんな「円安の呪縛」から解放されるべく、回転寿司チェーン「スシロー」をはじめ、値上げラッシュが起きているとのニュースがありました。日本の将来を左右する物価は、今後どう変動していくのでしょうか。

参考記事:

5月23日 日経電子版「100円の呪縛外せるか 安いニッポンに値上げラッシュ」

4月29日 日経電子版「円安は労働力の安売り」