揺れ、動く?経営権とマックの未来

マクドナルドで昨年夏に発覚した、期限切れの鶏肉を使用していた問題。中国の報道機関が捉えた映像は、日本でも重大かつ深刻なニュースとして報じられました。筆者も問題が発覚して以来、利用することはあっても、ハンバーガーやナゲットを頼むことは一切なくなりました。周囲の客を見ても飲み物だけを購入する人、デザートだけを注文する人など、「ハンバーガー」を食べている人が少なくなったように思います。

今年1月には異物の混入も見つかっています。日本経済新聞の記事で、米国の親会社が約5割を握る日本マクドナルドホールディングス株の売却を考えていることを知りました。大手商社や国内外の投資ファンドに打診を始め、最大約33%分を売却する方針と伝えられます。譲渡先が筆頭株主として経営を握る可能性もあり、売却額は1000億円規模と見られています。

今回の決断の背景にあるのは、日本事業の低迷です。米マクドナルド自身も消費者の健康志向や競争力の低下で業績不振に直面しています。今春には、18年末までに全世界の店舗の1割弱にあたる3500店をフランチャイズ店に切り替える方針を示しました。そうしたなかでも気になるのが、日本での業績ということでしょう。2015年12月期の最終損益は380億円のマイナスと2期連続で赤字決算に陥る見通しです。

日本マクドナルドホールディングスは1971年に故藤田田氏と米マクドナルドが共同出資して設立し、同年7月には東京・銀座に1号店を開きました。日本に進出して約45年。初の出資関係の大幅な見直しは、他のファストフード会社や外食チェーン産業に大きな影響を与えるでしょう。

異物混入が発覚して以来、テレビCMではマクドナルドが取り組む慈善活動などが取り上げられ、信頼回復を狙っている印象を受けました。しかし、消費者に染み付いた悪印象はなかなか変えられなかったようです。筆者が注目したいのは信頼回復に努めることに加え、品質の改善に努めたかどうかという点です。ハンバーガーを売るお店なら、慈善事業に取り組んでいることをPRするよりも「安全で、美味しい」ハンバーガーを宣伝するべきだったと考えます。

今後、日本での業績が上向くかどうか。経営が変わることで改善されるかもしれません。ですが、マクドナルドに求められているのは「ハンバーガーときちんと向き合うこと」のように思います。

参考記事:

22日付 日本経済新聞朝刊(大阪14版)1面「日本マクドナルド売却 ファンドなどに米本社打診 株最大33%分」,12面(企業)「日本低迷 長期化に焦り 米マクドナルド出資45年で見直し」