時代とともに物語やヒロイン像は変化するものです。10月から始まった秋ドラマの多くが最終回を迎えました。お坊さんと恋をする英会話講師、刑事の彼女、記憶が1日しか持たない女探偵―。登場する人物の性格が自分と似ているとついつい見てしまいます。今日は、女性像について考えたいと思います。
日本女子代表で史上最多の205試合に出場していた澤選手。2011年のW杯では、大会の最優秀選手と得点王に輝き、なでしこジャパンを初優勝に導きました。日本人として初めて、国際サッカー連盟(FIFA)が選ぶ女子の年間最優秀選手に選ばれる輝かしい功績を残した彼女は、17日の記者会見で引退を発表しました。記事には一問一答が載っています。次のような質問がありました。
「8月に結婚を発表して引退。関係はあるか?」
「まったく、それはない」
Yahoo!ニュースに「澤が引退会見 結婚は関係ない」と掲載されていました。どうして結婚についてふれるのでしょうか。芸能人の結婚報道についても言えます。日経MJの2015年ヒット商品番付で「福山婚」が入っていました。記憶に新しい人も多いでしょう。この時も「妊娠の予定はなし」と報道されています。このような質問や見出しは、あまりにも性を意識し、家庭か仕事かの二者択一が迫られるという考え方にとらわれている気がします。
日本経済新聞夕刊の連載「ドラマが描いた家族」。ドラマ評論家の成馬零一さんが、映像の中の家族を通じて日本人の戦後の歩みについて書いています。時代ごとの社会の空気や文化が色濃く反映されているのがドラマや映画です。記事を読んでどれほど現在と違うのか気になりました。大学の先生の助言で、映画『母の湖』(1953年三益愛子主演)を見ました。日本の大衆文化における母性愛を表現していると紹介してくれました。男女は平等、イエ制度は廃止。これらが新民法により1947年に制定されたものの、セクハラや不平等が社会に横たわっていることが映像から伝わってきます。また、清楚で一途な女性像や子供のためによく尽くす母親像がわざとらしいくらいに目につきました。
古い映画を見ることで歴史的な女性観にふれることができます。家族や女性のイメージが変遷していることを一人一人が意識することが必要です。一般的に結婚すると女性は仕事をやめるべきという女性像、あるいは妊娠したから結婚すべきだという母親像。どんな印象を持っても構いません。しかし、その認識が現在でも通じるものなのか。そうしたことを確認する作業は欠かせません。
参考記事:
18日付朝日新聞朝刊 東京21面 「澤引退会見 一問一答」
12月2日から毎週水曜日掲載 日本経済新聞夕刊連載「ドラマが描いた家族」
2日付 日経MJ(流通新聞)001ページ 「2015年ヒット商品番付」
Yahoo!ニュース「澤が引退会見 結婚は関係ない」12月17日(木) 18時22分掲載