技術革新は「らしさ」の転換期?

私の中学時代、楽しみだった授業は技術科や家庭科でした。今は男女にかかわらず当たり前に受ける科目ですが、かつて男子は技術、女子は家庭と決まっていたというのですから、驚きです。

このような区別は「男/女っぽいから」という安直な考えというよりも、当時は中学卒業とともに就職する生徒が多いうえ、女性の結婚時の平均年齢が今よりも若かったことがその背景にあるようです。ただ、そのような社会的背景があったとしても、やはりこれらの科目に「〇〇っぽい」という印象を持ってしまっているのは私だけでしょうか。差別的な意識はなくとも、今までの経験からのバイアスがかかってしまっているのかもしれません。

しばしば道具と「らしさ」というのは密接な関係を持っていると思います。例えば、Googleで「男 車 運転 キュン」で検索すると、約514万件もの記事がヒットします。その多くは「運転中にこんなことをしたら女子にモテる!」といった内容です。「女 車 運転 キュン」に変えてみると、結果は約101万件。5分の1にまで下がります。実際には女性も運転していますが、車やバイクといった、ときにはアウトローな印象を与えるような趣味は、男性的と見られる傾向が強いのでしょう。

自動車業界では、自動運転の技術が進化しています。日産やホンダでは2030年までに原則全ての車に標準装備するとし、外国ではすでにテスラが新車に搭載しています。これで、今のような運転が必要なくなったら、車には移動という実用面だけが残り、映画『イージーライダー』のようなワイルドなイメージも、時代を経るにつれて薄れていくやもしれません。

あらゆる場面でいえることですが、技術革新が進めば私たちの生活は楽になるはずです。そして、身近な「オートマ化」が、性別による役割分担についての決まりきった見方を壊すということも考えられます。

「~らしい」と括ること自体、時代遅れなのは重々承知して、「男性らしさ」「女性らしさ」と聞いて、皆さんはどんなものを想像しますか。前者は、すでに述べたようなワイルドさかもしれません。後者をよりかみ砕くと、おそらく「奥ゆかしい」「かわいらしい」といった、前時代的な女性像が見えてくるでしょう。そうしてみると、ルンバや自動調理器の登場でボタンを押せばだれにでも掃除や調理ができるようになることは、かなりダイレクトに「女性らしさ」を変える可能性もあるのではないかと思えてきます。

自分でやらなくても、機械がやってくれる。そんな「近未来」は、文字通りすぐそこにあるのかもしれません。テクノロジーの進化は、どこまで性的役割分担の壁を取り払ってくれるのでしょうか。

 

参考記事:

26日付朝日新聞朝刊(東京13版)13面、「運転の『かっこよさ』 自動運転の時代は」

26日付日本経済新聞朝刊(東京13版)2面、「日産、全新車に自動運転」