ツイッターの就活アカウントを見て思うこと

その日思いついたこと、感じたことを気軽に投稿できるツイッター。一人で複数のアカウントを持つことができるため、本格的に就職活動が始まった3月以降、23年に卒業予定を意味する「23卒」と書かれたアカウントでツイートする人が増えたように感じる。筆者もこれから就活をする立場であり、関心を持って就活アカウントをフォローしている。

「23卒」でアカウント検索をすると、上から下までスクロールしきれないほどだ。MARCHや地方国立、Fランなど、自分の大学が特定されない程度に、時には自虐的に自己紹介を書き、就活の意気込みや愚痴が投稿されている。

 

匿名性があるゆえに、様々な裏事情を垣間見ることもできる。自宅のパソコンで適性検査を受験する際に、家族や友人と相談しながら、企業から高印象に見られそうな回答をしたという人。マッチングアプリで難関大の学生と知り合ったうえWEBテストを代行してもらう、WEBテストとデートを合わせた造語「WEBテデート」をしたという投稿もあった。

不正をしながら、匿名とはいえ悪びれずに公言しているアカウントを見て、いかに就活が大変なのか考えさせられる。もちろんカンニングや他人の回答を企業に送信する違反行為は褒められたものではない。しかし、内定が得られないことへの不安、第一希望の会社に入社したいという強い気持ちからの行動なのではないかと思うと、複雑な気持ちになる。

 

大学入試と比較してみたい。朝日新聞出版の「大学ランキング2022」では、大学入学者に占める現役生と浪人生の比率が紹介されている。国立大における現役入学率が低いランキングで首位の東京芸大は現役生が50.7%で、残る半分は既卒生。2位の北海道大は入学者の4割ほどが浪人生だ。1月に実施された大学入学共通テストの志願者を見ても、14%ほどは浪人生だった。

では、就職はどうか。「第一希望の会社に入社したいから、就職をもう1年やる」。これは理解者が少ないだろう。現役の就活生が少しでも自分の希望する会社に入社をしようと、不正までするきっかけは「新卒の就職活動は1度きり」という切羽詰まった意識があるのではないか。

 

「自分に合う会社を見つけよう」といった、人材紹介会社の宣伝文句を何度も目にするが、会社が自分を選んでくれるとも限らない。企業説明会を主催するキャリア会社が図書カードやギフトカードなど豪華な参加特典を準備して、一見華々しく見える就職活動も、内定を得るまでの学生の多くは悩み苦しんでいる。

「23卒」の就活アカウントでは、やる気が出なくてまだ何もしていないという投稿も目にした。大手キャリア会社のサイトだけでなく、地方自治体の外郭団体による就職支援もある。就職を希望する人全員が、第一希望の会社でなくとも納得して就活を終えるためには何が必要なのか。ツイッターの就活アカウントを見て考えさせられる。

 

就職活動を通して人間関係が広がり、内定を得る本来の目的以外に得るものも沢山ある(12月23日、筆者撮影)

 

参考記事:

3月28日 日経新聞電子版 インターンの適切な運用を 24年春卒の就活、政府が要請

 

参考資料

AERA 受験生が「浪人してでも入りたい」大学は? 現役生比率が低い国立大トップ10

大学ジャーナル 大学入学共通テスト志願者53万人、浪人生は過去最少に