春だ!野草を採りにいこう!

3月に入ってもう2週間。気温はここ最近ぐんぐん上がり、ユニクロのヒートテックをわざわざ持ってくる必要はなかったと、帰省先の静岡の実家で思った。

暇だったので久しぶりに自宅近くの土手を歩いてみた。斜面は肌色の枯れ草で埋め尽くされ殺風景である。それでも、作付けされた畑の近くや川のほとりでは、水分が得られるからか、野草がもう茂っていた。植物の世界でも、春がすぐそこまでやってきている。

筆者はこの季節の植物に思い入れがある。通っていた小学校のすぐ近くには校舎の4階ほどの高さの山があり、当時は昼食後の休み時間にだけ児童の立ち入りが許されていた。竹林があり、5月はタケノコがよく採れた。「名人」と呼ばれる子がおり、彼は30分ほどで5、6本も採っていた。一方、私はとにかくそのセンスがなかった。名人にご指導をいただくこともあったが、一向に上達せず、しまいには名人の後ろで「見学」するばかりだった。

タケノコに関していい思い出はあまりないが、当時から割と好きなのがノビルだ。ユリ科ネギ属の植物で、球根の部分を食べることができる。ノビルの葉は細長く、ほかの野草と見分けがつきにくい。ただ、ネギ属ということもあってニラのような姿で香りも強いため、それが目印になる。雨が降らず土が固くなっているときは、葉を引っ張ると簡単に切れてしまうため、球根の上の土を手で十分にほぐしてから引き抜く必要がある。

ノビルの食べ方はいたってシンプル。まずは葉の部分をちぎり取り、続いて球根についた土を水で洗い流す。そしてさっとゆでる。調味料は味噌だけで勝負。きゅうりにマヨネーズをつけるような要領で食べる。するとノビルのかすかな甘みを感じることができる。見た目によらず、新玉ねぎのような柔らかい食感も特徴だ。筆者は下校中にノビルを採り、帰宅後に友人の家にお土産として持っていったことが何度もある。結構喜ばれた。春とはいえど夕方はまだ少し肌寒い3月。友人宅の大きな掘りごたつに足を突っ込みながら、任天堂のWiiのリモコン片手にノビルをひたすら貪り食っていた。小学生らしからぬ春の通な楽しみ方だ。

左から、菜の花、つくし、ノビル。10分ほどで収穫。菜の花は苦みがあまり好きではないので、一本だけ。(13日、筆者撮影)

土手を歩いていると、つくしを見つけた。春の食用の野草のなかでも、比較的収穫時期が早い。卒業式や終業式も終わり、春休みで時間を持て余している小学生にとっては、うってつけの暇つぶしになる。つくしはスギナという植物の胞子茎にあたり、その足元にはスギナの地下茎が張り巡らされている。したがって、群れで生えているつくしは短い時間でもある程度の量を収穫できる。夢中になって採りだしたら、止めていた自転車からだいぶ離れたところまで来ていたこともしょっちゅうだ。他の春の食材と比べて苦みも少なく、佃煮にすれば美味しく食べられる。

本州では、3月につくしや菜の花、4月にノビルやヨモギ、5月にタケノコやキイチゴ、ツワ、フキ、ゼンマイ、フキノトウなどさまざまな食用の野草が採れる。コロナの感染防止で自宅に引きこもりがちな昨今、身近な食材を採りにたまには家を出てみてはいかがだろうか。

つくし(13日、静岡県、筆者撮影)

菜の花(13日、静岡県、筆者撮影)

参考記事:

朝日新聞デジタル 2021年3月26日「めざめにぴったり 味と香を楽しめる野草の魅力」