パブに潜む危険 女性守る合言葉「アンジェラ」

1人で歩いている時に外国人に道を聞かれたら、親切な対応をする自信がある。しかし、もし相手が黙っていたらどうだろうか。「助けて」の一言がどうしても言えない場合だってある。

 

助けを求められずとも人助けをしようとする人。そういう人のことを世間は「世話焼き」とか「お節介」という。英国に住んでいて、多くの「世話焼き」場面に出会った。例えばこんな例がある。

 

◆男性に介抱されている泥酔した女性の友人に対して、他の卓の見ず知らずの女性が「危ないから家に連れていっちゃだめだからね!」と本人も泥酔しながら厳しく注意する

◆男性とふざけながら少し大きめの声で言い合いをしていたときに、通りすがりの女性が間に入って「大丈夫?何かあった?」と声をかける

 

当事者からすれば危険度ゼロのただの冗談でさえも、本気で声をかけられ、心配される。どうしたら他人の身の安全にそこまで敏感になれるのかと疑問に思っていたところ、パブで興味深い貼り紙を見つけた。

Hi I‘m Angela. 

英国のパブを利用する人ならほとんどがこの貼り紙を見たことがあるだろう。トイレのドアや壁に貼られてある、女性を守る魔法の言葉。客が「Angela(アンジェラ)」と店員に話しかけるだけで、こちらが今の状況から逃げるための助けが必要だということを知らせることができる。そしてスタッフが速やかにタクシーを呼び、騒ぎ立てることなく逃げられるように手助けしてくれる。

 

店員はそのためのトレーニングを受けており、その女性を安全な場所へと連れていき、タクシーを呼んだり、友人や家族に連絡したり、裏口から出ていくのを手伝ったりする。

 

重要なのは、身の危険が確かなものでなくても使って良いということ。「デートがうまくいっていない」「少し変な感じがする」「マッチングアプリで出会った人がプロフィール写真と顔が違う」。そんな些細なことでいい。少しでも違和感を覚えたら、誰もがこの手段を使っていいのだ。

 

この制度があるだけで、スタッフだけでなくパブにいる全員がリスクを共有できる。「助けて」と直接的に言えなくても、助け合える環境。デートDVや盗撮などは、男女間の個人的なトラブルだと捉えられがちだがそうではない。女性を守るには、周りの積極的な手助けが欠かせないし、少しでも何か危険を感じたならこちらから声をかけてあげることが必要だ。

 

思い過ごしだったとしても恥じることはない。お節介こそ、人を助ける。これからはもっと、余計なお世話を焼いていこう。

 

参考記事

朝日新聞デジタル「背後でも「盗撮」、実刑判決 「被害者の不安から判断」 東京高裁」

 

・参考資料

BBC

‘Ask for Angela’ campaign rolled out across UK – BBC News

National Pubwatch 「National Pubwatch supports Ask for Angela campaign」

ナショナルパブウォッチは、アンジェラキャンペーンを求めるをサポートしています – ナショナルパブウォッチ (nationalpubwatch.org.uk)