成人の日の10日、大相撲初場所の2日目です。筆者の通う大学は日本相撲協会と産学連携を結んでいるため、学生はボランティア活動に有志として参加できます。伝統文化に触れたい思いから、筆者も両国に降り立ちました。国技館に行くのは今日が初めて。初心者の視点からその現場をお届けします。
午後1時から、担当する春日野部屋の岩友親方(元前頭木村山)、山響部屋の小野川親方(元前頭北太樹)、阿武松部屋の不知火親方(元小結若荒雄)の物販の仕事を手伝いました。
不知火親方は幼少期から近くの相撲教室に通い、中学を卒業してすぐに相撲の世界に飛び込んだと言います。力士を続けてきても親方になれるのはほんの一握りだそうです。厳しい世界を歩んできたお三方ですが、お客さんへのサービス精神は旺盛。子供と写真を撮ったり、サインを書いたり、国技館の売店は交流の場であることが伺えました。
1番の売れ筋は何と言っても番付。1枚55円です。一見対戦表のようにも思えますが、大相撲における力士のランクの早見表に当たります。筆者も休憩時間やボランティア終了後、この番付を握りしめながら観戦しました。
売店では、力士がプリントされたうちわに缶バッジ、アクリルスタンドまで売っています。いわゆる「推し活」グッズが相撲界にまで浸透していることに驚きました。
2014年頃、相撲好きな女性を指す「スー女」という言葉が流行りました。その言葉に象徴されるかのように、20代、30代の女性が多くいたことが印象的でした。ご年配の方はもちろん、若いカップルから親に連れられた小さな子供まで、幅広い層から相撲が愛されていることを実感しました。
今回子供たちが多い理由の一つに、ポケモンが挙げられるかもしれません。今場所は25年目を迎えた人気ゲーム「ポケットモンスター」とのコラボレーションが実現しています。1社では過去最多となる257本の懸賞がかけられ、ポケモンがデザインされた懸賞旗は総計200本以上に及びます。取り組みの度に、ポケモンが描かれた懸賞旗が登場し、会場は笑い声に包まれました。
1階エントランスと2階展示スペースには、ピカチュウとハリテヤマが描かれた「化粧まわし」や歴代ゲームのパッケージデザインの懸賞旗も飾られています。子供たちが国技を知れる良い機会になればと思います。
今日の楽しみは、何と言っても照ノ富士。3場所連続7度目の優勝を目指す唯一の横綱です。朝刊では、各紙揃ってその強さについて言及していました。
試合本番、「結びの1番であります」。というアナウンスと共に、会場が沸き立ちました。豪快な左小手投げで若隆景を下し、連勝した照ノ富士には、この日1番の歓声が。ほんの一瞬の出来事に息つく暇もありませんでしたが。
時間の関係で、ボランティア終了後の最後の7番しか観戦できませんでしたが、テレビからでは読み取れない力士たちの闘志あふれる立ち合いを、十分に肌で感じることができました。
今回、親方や部屋関係者らの感染により、田子ノ浦部屋と錦戸部屋の力士らは出場を断念しています。座席の間隔を空け、持ち込みも従来通り禁止。「コロナ」を嫌でも意識せざるを得ない状況でした。それでも闘志を燃やす力士や度量の大きい親方に触れ、コロナ禍でも屈しない強い気持ちを感じることができました。
筆者は千秋楽のボランティアも控えています。残り13日間、何事も起こらず無事に最終日を迎えられることを祈るばかりです。
参考記事:
8日付 読売新聞オンライン 「ポケモンの懸賞旗、大量ゲットだぜ…大相撲との異色タッグ拡充」
10日付 朝日新聞朝刊 埼玉 13版 9面 「照ノ富士 耐えきる強さ」
10日付 日経新聞朝刊 埼玉 12版 24面 「照ノ富士 V3へ崩れず」
10日付 読売新聞朝刊 埼玉 13版 17面 「照ノ富士 辛勝発信」