NHKは再検証すべき

ねつ造ではなく、やらせでもない。それは「重大な放送倫理違反」でした。ピンと来ないこの表現。NHK「クローズアップ現代」を巡る問題は、いったい何だったのでしょうか。

発端は昨年5月の同番組放送回でした。多重債務者を出家させることで金融機関からお金をだまし取る「出家詐欺」を特集。多重債務者とブローカーの相談模様を隠し撮りし、放送しました。しかし、隠し撮りは「演出」だったことが発覚。多重債務者とブローカーは元々知人で、取材を担当した記者もこの多重債務者とは知り合いでした。一連の「やらせ疑惑」は、ブローカーとされた男性の告発によって明るみになりました。

経緯を自分なりにまとめてみて、改めてこれは「ねつ造」「やらせ」であったと感じています。実際の放送は見ていません。ニュースの資料映像で少し目にした程度です。問題シーンの前後をしっかりと見ていないので、フェアではないのかもしれません。しかし、隠し撮りは予定調和で、記者と多重債務者は旧知の間柄。ブローカーとされた男性も詐欺行為を否定している以上、看過することはできません。

放送倫理・番組向上機構(BPO)の委員会は今回、「重大な放送倫理違反」としました。「ねつ造」や「やらせ」とは認めなかったものの、厳しく言及しました。しかし、「ねつ造」や「やらせ」の定義や線引きは視聴者にとって分かりづらいです。NHKは今後の再検証は予定していません。BPOによる認定を避けられたからと言って、幕引きを図るのは姑息です。NHKは広く視聴者の声を拾い、再度問題を見つめ直すべきです。

 

参考記事:

7日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1面「自民聴取『圧力』と批判」社会面「『政府介入許されない』」

同日付 読売新聞朝刊(同版)1面「NHK クローズアップ現代『重大な放送倫理違反』」3面「報道の許容範囲逸脱」社会面「NHK 再検証せず」

同日付 日本経済新聞朝刊(同版)社会面「『重大な倫理違反』」