生理の貧困に続く「ピルの貧困」 薬局販売可能か

経済的な理由からの生理の貧困が問題視され、徐々にではありますが大学などで生理用品の無料提供が広まってきています。そんななか、いまだに高い障壁によって若い女性のアクセスが阻まれているのが緊急避妊薬、いわゆるアフターピルです。

□最後の手段 アフターピル

避妊具の破損や低用量ピルの飲み忘れによる避妊の失敗は誰にでも起こり得ます。そんなとき、中絶に至る前の最終手段として用いられるアフターピル。これは、性行為から72時間以内に服用することで妊娠の可能性を下げることが出来るものです。早ければ早いほどその効果も高いといわれます。

しかし、日本で入手するには、病院で医師に処方してもらわなくてはなりません。その費用も避妊効果の高さによって異なります。避妊率の高いものでは保険なしで1万円以上することもあります。

「親に言いたくない」「自分自身では払えない」。そんな未成年にとって、医療診察は特にハードルが高くなります。保険証を持って病院に行くと親に知られてしまう。かといって自費で買うお金もない。避妊に失敗したことが恥ずかしくて誰かに相談することもできない。早急な措置が求められるにもかかわらず、避妊への間違ったイメージから一人で抱え込み、対応が遅れてしまうのです。

□英薬局で購入可 さらなる値下げ求める声も

筆者の住んでいる英国では、医師の診察が必須な日本とは異なり、市販薬としてドラッグストアで購入することが出来ます。英大手薬局Boots(ブーツ)の店頭では15.99£(約2400円)から販売されているそうです。もちろん、薬剤師への相談が必要になりますが、日本に比べると格段に安く手に入れることが出来ます。

しかし、それでもなおブーツに対して値下げを求めるイギリス人の声はやみません。選挙運動家のメーガン・ダベンポートは、「なぜ私たちが支払わなければならないのか、特にそれを買うお金がないかもしれない若い女の子のために。私は本当に理解できません」と述べました。

※薬局Boots(ブーツ) (12月5日筆者撮影)

ブーツは、先月の割引セール期間に半額の8ポンド(約1600円)に引き下げたものの、その後、通常の価格設定へと戻しました。これに対し、毎年10万人以上の女性に生殖医療を提供する慈善団体BPASのクレア・マーフィー最高経営責任者(CEO)は、「来週、この必須薬を必要としている女性が、今日請求されているものの2倍の支払いを余儀なくされるのは間違っている」と強い不信感をあらわにしました。

手間と費用がかかる日本と、全女性の手軽な入手を目指す英国。日本でも市販薬として解禁するべきかの議論はなされていますが、慎重派がいまだ多数を占めます。その理由としては、「避妊薬の乱用のおそれがある」ことが挙げられます。

たしかに、簡単に100%避妊できると誤認して、むやみに使うのは危険です。あくまでも、最後の手段として正しい知識のもとで使われなければなりません。しかし、育てる覚悟がないまま産んで育児放棄や虐待したり、中絶によって心とカラダに傷を負ったりするよりも、できるだけ早い段階で望まない妊娠を防ぐため、考えられる全ての方法を試す方が望ましいのではないでしょうか。

日本では性に関する話がタブー視されがちですが、避妊の予期せぬ失敗を「恥ずかしい」とか「だらしない」と後ろめたく悩む必要はありません。アフターピルの窓口が全ての女性に平等に開かれることを望みます。そしてそのために、社会が抱く避妊への意識を根底から変えていく必要があります。

参考記事;

21年12月2日付朝日新聞デジタル「大学の個室トイレで生理ナプキン無料提供 福島大が導入」

20年11月15日付 朝日新聞デジタル「「まじ、日本!」怒るシオリーヌ 緊急避妊薬は下ネタか」

参考資料:
BBC 12月1日 朝の後の錠剤:緊急避妊の価格を下げるためにブーツを呼び出す – BBCニュース