ドリンクの紙ストローに苦戦していたけれど最近やっと慣れてきた。そんな人は少なくないと思います。でも、ほっとするのも束の間。現在、プラ削減の対策がもう一歩踏み込んだものになろうとしています。各社の戦略はどのようなものなのでしょうか。
●一体、何が起きている?
今年6月にプラスチック資源循環促進法が成立しました。これに基づき、来年4月にはプラ製品の削減が小売、飲食店などに義務付けられます。今年の8月には環境省と経済産業省が政令・省令案を示しています。対象は、以下の表に記載された12製品の使用量が年5トン以上の事業者です。求められる対応は、①有料化②受け取らない客へのポイント還元③再利用④代替素材への転換、のいずれかのようです。
①の有料化は、利用者の負担につながるという理由で敬遠される傾向が見られます。来年4月には、対象となった事業者が対策を講じない場合には国が勧告や社名公表の手段を取れるようになり、命令違反には50万円以下の罰金が科せられるとも発表されました。「プラスチック削減の義務化」は相当な重みがあるようです。この時に備え、対象事業者は試行錯誤を繰り広げているのです。
●近所の実店舗で比較!各社の取り組み方の違いは?
環境に対する取り組みは、思った以上に重大な局面を迎えているようです。そこで、以下の表に基づきながら実際に近所の店を利用してみることにしました。プラ削減の対応策がどれほど実行されているか、利用してみた感想はどうかを記録してみたいと思います。
1店舗目は、タリーズコーヒーです。表にあるようにバイオマスプラを配合したストローがついてきました。これは④代替素材への転換といえるでしょう。元々のプラスチックの使用感に近いため、気になることもなく利用できます。
2店舗目はスターバックスコーヒー。フラペチーノを頼みましたが、プラスチックストローでした。最近、1度だけではありますがフラペチーノを紙製ストローで提供された経験があったため、プラスチックストローとは驚きました。店員さんと話すと店舗によっての差があるとのことでした。自身の近所にはまだまだ切り替えの波は及んでいなかったようです。なお、紙製ストローは④にあたります。ふやけやすく、冷たさを感じられないため個人的には違和感を覚えてしまいます。
続いてコンビニコーナーです。セブンイレブン、ナチュラルローソンはまだ実験段階のようで、実際に体感することはできませんでした。ポイント付与を考えているはずのセブンイレブンですが、実際の店舗には告知もなく、店員の方と話しても実験のこと以外はわからないとのことでした。近所のナチュラルローソンも、実験対象外の店舗なようでプラスチックスプーンでの提供でした。実験がこのまま実施されると、セブンイレブンは②に、ナチュラルローソンは④に該当することになるはずですが。
5店舗目はファミリーマートです。こちらは珍しいスタイルで、スプーンの持ち手に穴を開けて軽量化を図っています。実際に手にすると思った以上に穴は小さいです。上記の4項目に分類することはできませんが使用量の削減に注目したわけです。
紙面に載っていた店舗以外にも、環境対策で注目すべき会社があります。ロイヤルホストを含むロイヤルホールディングスは、削減対策を2年も前から率先して実行してきました。プラスチックストローを廃止し、自然分解される植物由来のストローを用意しています。それにとどまらず、店員さんに声をかけて受け取る仕組みのため、使用量を減らす効果も期待できます。店員さんは朗らかに対応してくれるため、不満を持ったことはありません。ドリンクバーにも環境に配慮するお願いが置かれており、取り組みの独自性を感じます。この活動がSDGsの何にあたるのかがマーク表示されているため、今何のために自分が行動しているかもわかりやすいです。
こうして考えてみると、筆者は④代替製品への転換が違和感なく環境配慮につながる手法だと感じました。特に、100%植物由来のストローはプラスチックに近い使い心地で、軽い素材なので広く浸透してほしいと思います。(皆さんは、①〜④でどの削減策が好みですか?)
●実際の効果は?
このように対策への取り組みも見られるものの、12製品の年間生産量は国内で数万トンと予想されており、プラゴミの1%にも満たないそうです。削減による環境への貢献度は、実は小さいのです。今回の政府の規制は、直接的な効果よりも身近な環境問題への意識を高める狙いがあるようです。ロイヤリティマーケティングの今年の調査によると、この一年でプラゴミによる環境問題への関心が高まった、やや高まったと答えた人のうち86・6%が「レジ袋有料化」が理由だと回答しています。確かに筆者も、プラに注目してからはフードロス対策の量り売りなどにも目がいくようになりました。
『意識を変える』。テンプレのような当たり前で漠然とした目標に見えてしまうかもしれません。ですが、案外大きな効果が期待できるのは、こういったアバウトながらも実施しやすいものなのかもしれません。
参考記事:8日付 読売新聞朝刊 東京13版 3面 削減対策来年4月義務化