スマホ決済競争は終盤へ PayPay追う企業は現れるか

スマホ決済。4、5年前こそ新奇な技術として扱われていたものの、今や市民権を得て、社会に広く普及しています。調査会社MMD研究所が18〜69歳を対象に先月実施した調査によると、普段の支払い方法でスマホ決済と回答した人は52%。2年間で4倍近くに急増しました。

かく言う筆者も、一昨年から使い始めたユーザの一人です。以前は現金と交通系ICカードを併用していましたが、学生寮の仲間が多く利用していたことから、使ってみようという気になりました。店で支払うときは、スマホの画面をサッと見せるのみ。オートチャージ機能があるので、残高が減っても入金する手間は要りません。会食後に割り勘するときも便利。小銭が不足するために端数を切り下げたり、後日払いしたりする必要はありません。1円単位で手軽に送受金できます。今や、日々の生活に欠かせないサービスとなっています。

このスマホ決済界隈に、新たなニュースが飛び込んできました。先週、ペイペイが加盟店に手数料を課すことを決めた一方、楽天ペイは、新規の中小加盟店を対象に、手数料を1年間無料にすると発表したのです。一部では、ペイペイの業界首位の座が揺らぐのではないか、といった予想も。読売新聞では、加盟店離れの可能性が言及されていました。

しかし、各企業が手数料を多少上げ下げしたところで、業界の趨勢に影響はないと筆者は考えます。楽天のキャンペーンは所詮1年間の期間限定です。ペイペイは有料化するといっても、業界最低水準の1.6%。そして、既にかなりのユーザ数を獲得しており、多くの消費者が重宝している事実も見逃せません。

最近のペイペイ旋風は凄まじいものがあり、全国の自治体で還元サービスを展開しています。筆者の実家がある都内某市では、付与上限を1.5万円分とした「30%戻ってくるキャンペーン」を来月実施。短期的な収益を度外視して、新規ユーザ獲得に全力を挙げようとする戦略が窺えます。71歳の老父も目が眩んで、遂にアプリをインストールしました。

同キャンペーンは市報の第一面で大々的に告知されていましたし、第二面では、市内のソフトバンク店舗などで、アプリの登録・使用方法についての説明会を実施する旨、記されていました。高齢者まで取り込むようになったら、中小の小売店とてペイペイの微々たる手数料を気にして、決済サービスから外すなんてことはもはや出来ないでしょう。

ペイペイは、スマホ決済の金額と回数とともに3分の2の占有率を誇り、業界首位の座を固めています。来年に予定するLINEペイとのシステム統合がうまく進めば、シェアを7〜8割まで伸ばすことも十分あり得るのではないでしょうか。

気になるのは、2位以下の争いです。楽天ペイ、メルペイ、auペイ、d払いなどが乱立しています。いずれもネット通販や携帯電話など従来のサービスで囲い込んだコアユーザの確保には成功しているものの、層を広げられているかは微妙です。むしろ、囲い込んだはずのユーザがペイペイに流出していく可能性もあります。オリガミペイは昨年消滅。ファミペイは今年の2月をピークにユーザ数が頭打ち。業界下位の企業には、淘汰の波が迫ってきていますから。

個人的には、アリペイ(支付宝)とウィーチャットペイ(微信支付)が並立する中国のような、寡占市場が好ましいと思います。1種類のサービスに集約されている方が友人間での送受金に便利です。しかし、銀行口座を複数使い分けるように、リスク分散を考慮すると2〜3種類存在している方が良いのかな、という気がします。

業界首位を確定させたペイペイが今後どこまでシェアを伸ばしていくのか。2位以下はどう生き残り、どう淘汰されていくのか。競争はそろそろ終盤戦に差し掛かるところ。各企業の動向に目が離せません。

 

参考資料:

26日付 読売新聞朝刊(東京13版)9面「スマホ決済 手数料競争」

PayPayのキャンペーンを告知する市報